プレミアリーグの時間BACK NUMBER
リバプールはプレミアのロッキー?
クロップの決意はシティ独走阻止。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/08/17 10:30
ロシアW杯では不完全燃焼だったサラー(中央)、マネ(右)が開幕戦でゴール。今季もリバプールの攻撃力は健在だ。
クロップはロッキー大好きだから。
もちろん昨季2位のマンチェスター・ユナイテッドは、宿敵同士の地元対決から天敵同士の指揮官対決まで、話題性も十二分に楽しめるところではある。
しかし、ユナイテッドの下馬評は「4位以内」止まり。これまで就任3年目の「鬼門」を前にしたジョゼ・モウリーニョは、補強不足への不満が絶えず、今季解任監督第1号の有力候補と目されているような状態だ。また、昨季3位のトッテナムは補強なし……。新体制下でチームの立て直しとトップ4復帰を目論むチェルシーとアーセナルとともに、4位争いが精一杯との見方が強い。
となると、唯一シティに対抗できると思われるのは、昨季4位からのステップアップが見込まれるリバプールということになる。
就任4年目に入るユルゲン・クロップ監督は、すっかり自身の色が浸透したチームを、開幕前に「ロッキー・バルボア」にたとえた。
勝ち目の薄い立場を主張することでプレッシャーを軽減する狙いかに思われたが、クロップは映画『ロッキー』シリーズのファンである。優勝を争うには「より過酷な鍛錬を積み、より激しく戦い続けなければならない」との決意を込めて、ハングリーな挑戦者である主人公になぞらえた発言だったようだ。
移籍市場でも積極的な姿勢。
優勝争いを戦い抜くという意気込みは、移籍市場での積極姿勢からも窺えた。
今年1月にフィリペ・コウチーニョと引き換えにバルセロナから振り込まれた、1億4000万ポンド(約200億円)台の貯金があったとはいえ、今夏の補強に費やした金額は約1億7000万ポンド(約250億円)。移籍金総額は20チーム中最高である。準優勝に終わった昨季CL決勝翌々日に合意が発表されたファビーニョの獲得は、噂が流れる隙も与えない速さで繰り出された先制攻撃だった。
金額面の目玉は、獲得時点でGKとしては世界最高の移籍金6680万ポンド(約97億円)を要したアリソンである。注目の守護神はさっそく、8月12日の開幕戦でプレミアデビュー。難敵ウェストハムを寄せつけなかった4-0快勝でこそ見せ場は訪れなかったが、昨季まで誰が立っても不安定だった自軍ゴールに安心感がもたらされることは間違いない。
その手前の最終ラインには、年始に加入したビルヒル・ファンダイクが、今季は開幕から守備の要として存在しているのも心強い。