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全米プロ好発進、ファウラーの心。
親友の死を悲しむより人生を祝福。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/08/10 12:20
ジャロード・ライルを悼むイエローのシャツで、リッキー・ファウラーは初日を「エンジョイ」した。
「今日は悲しむのではなく、エンジョイする日」
そして、悲しみの中でも気持ちを明るく前向きに持っていこうと努めた。
「僕らが悲しみながらプレーしていたら、ジャロードは『何をめそめそしてるんだ!』って蹴飛ばしてきたはず。だから今日は悲しむのではなく、彼が生きた日々を祝福し、それを思い出してエンジョイする日。そして、その祝福を僕はこれからも続けていく」
メジャー惜敗に対する世間の厳しい視線、米メディアの辛辣な質問、そして親友の死。それらをすべて抱え込み、上手に咀嚼できたこと。ファウラー好発進の背景には、そんな事情があった。
首位に立ったウッドランドも娘の死を乗り越えて。
初日、6アンダー、64をマークして最終的に首位に立ったのは34歳の米国人、ゲーリー・ウッドランドだった。
ウッドランドとファウラーと言えば、今年2月のフェニックス・オープンが思い出される。あのときもファウラーは「友」の死の悲しみを抱えていた。
気管に障害を持って生まれ、言葉を発することができずに手術を繰り返してきたアリゾナの地元少年、グリッフィンくんが大会前週に7歳で他界。ファウラーはずっと交流を続けてきた少年の早すぎる死を悼みながら、しかしやはり前向きに、明るい笑顔のグリッフィンくんの写真をバッジにして配りながら大会に挑み、そして優勝争いに絡んだ。
残念ながらファウラーは勝利を逃がし、プレーオフを制して優勝を飾ったのがウッドランドだった。
ウッドランドの愛妻は昨春、男女の双子を身ごもっていたが、女の子は生まれてくることができず、ウッドランドはその悲しみを胸に抱いてプレーしたと明かした。
だが同時にウッドランドは、元気に育っている男の子を腕に抱きながら「父親として初めて噛み締める勝利の味は格別だ」と喜びを噛み締めた。
悲しみを喜びに変え、涙を笑顔に変え、苦しい気持ちも前向きに――。
誰の人生にも、いろんなことが起こり、誰の胸の中もいろんな想いがある。それを、どう受け止め、どう咀嚼し、いかにしてパワーやエネルギーに変えていくか。