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全米プロ好発進、ファウラーの心。
親友の死を悲しむより人生を祝福。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/08/10 12:20
ジャロード・ライルを悼むイエローのシャツで、リッキー・ファウラーは初日を「エンジョイ」した。
ミケルソンの時とは時代が違う。
ミケルソンがメジャーで惜敗を続けていたのは1990年代から2000年代の始めごろ。2004年のマスターズを制覇し、惜敗の日々に、ようやく終止符を打った。
そんなミケルソンとファウラーをそのまま比べるのには少々無理がある。なぜって、やっぱり時代が違うからだ。
ミケルソン全盛期の時代と比べれば、より良いクラブやボールを使い、優れたコーチングやトレーニングを受けながら参戦している現代の選手たちは格段に恵まれており、技量レベルは高まるばかりだ。
だがその一方で、体格もスイングもゴルフのスタイルも十人十色だった'90年代やそれ以前と比べると、技量レベルが一様に高い現代は、選手間の差があからさまに縮まっている。
トッププレーヤーなら誰もがハイレベルな技量、強靭な肉体を備えている現代のゴルフ界。だからこそ、大きな差が出るのはメンタル面だと言うことができる。
それならば、今日の全米プロ初日、ファウラーは優れた技術はもちろんのこと、優れたメンタル面をも武器にして好発進したということか?
答えは「イエス」だと私は思う。
開幕前夜に起こった親友ライルの死。
今大会の開幕前夜、ファウラーが「僕の親友」と呼んできたオーストラリア人選手のジャロード・ライルが36歳でこの世を去った。
ライルは17歳だった1999年に白血病を発症し、プロゴルファーになる夢を諦めかけたが、母国の先輩プロたちや支援団体のサポートを受けて必死の闘病を重ね、奇跡的に回復。2004年にプロ転向し、2007年から米ツアー選手になった。
だが2012年の春に再発。そして、もう1度奇跡的に回復し、2013年に戦線復帰した。
しかし、またしても病魔に襲われ、ついに3度目の奇跡は起こらず、全米プロの開幕前日、母国で家族や友人たちに見守られながら静かに息を引き取った。
その悲しみをも力に変えてプレーする。この日のファウラーは、そういうメンタル面のコントロールができたからこそ、持てる力を発揮することができたのだ。
ライルを支援してきた母国の財団のマスコットは黄色いアヒル。そのため、黄色は「ジャロード・ライルの色」とされてきた。ファウラーは元々は「初日はネイビーブルーのシャツを着る予定になっていた」そうだが、ライルを想い「黄色いシャツがちょうど手持ちの中にあってくれたので、今日は黄色を着て戦った」。