青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
石川遼が羨む野球選手の肉体。
「あと5cm」の壁をのりこえる術は?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2011/01/11 10:30
今年もマスターズからの招待状を受け取った石川遼。世界のトップレベルと常に争う意識を持つ彼だからこそ、身体の絶対的な差というものを意識することにもなる
年末年始も石川遼はあいかわらず忙しい。
シーズン終了後もテレビマッチの収録やチャリティーゴルフへの参加、CM撮影などを休みなくこなし、大晦日の紅白歌合戦にまで登場した。
「手汗がすごくって、マイクを握る手が滑りそうだった。一番大事な『紅白歌合戦』ってセリフを噛みそうで怖かったですよ」
試合以上に緊張したという国民的番組の開幕宣言の大役も無事に果たして、ホッとした気持ちで新しい1年を迎えた。そして、アジア代表としてロイヤル・トロフィーに出場するため、新年4日にはタイに向けて出発していった。
そんな多忙な日々の中、石川のささやかな願望がもれた時があった。
経済的成功を手にした石川が欲しがったプレゼントとは?
12月24日、石川は当然この日も仕事、また仕事。
朝からテレビマッチの収録を行い、大相撲の横綱・白鵬やメジャーリーガーの福留孝介や上原浩治、レスリングの吉田沙保里ら各界のトップアスリートとラウンドした。さらに夕方からは地元・埼玉県松伏町の公民館を訪れ、自らの写真展の寄付金贈呈式を行った。
世はクリスマスイブである。
20歳前後の年齢ならもっと浮かれてもいい特別なイベントの日。
石川はそうしたものに気楽にはしゃぐことのできない不自由さの代わりに、夢を追い続ける権利や経済的成功を手にしている。そこには他人がうらやむ充足感の一方で窮屈な現実もあるはずだ。
だからこそ「なにかサンタさんに頼みたいものはないの?」と尋ねてみた。
石川は「昔は一輪車とかでしたねえ」と言いながら考え始めたが、なかなかこれといった“物”が浮かんでこないようだった。「本当に物欲はないんですよ」と悩んだ末に出した答えは意外なものだった。
「サンタさんに頼むことじゃないかもしれないけど、身長があと5cm欲しいです」
どこまでも浮ついた願い事にならないところは石川らしいのだが、これまでフィジカルに対するコンプレックスのようなものを見せたことがなかっただけに、この言葉には少し驚かされた。