青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
世界の女子選手をも魅了する、
石川遼の“奇跡の一打”。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO/Mami Yamada/Shiro Miyake
posted2010/05/02 08:00
申智愛(左)も諸見里しのぶ(右)も石川遼の「スター性」に注目する。プレーだけでなくファンやギャラリーのことをここまで考えるプロスポーツも、珍しいかもしれない
年間6勝を挙げた昨年のシーズン中、諸見里しのぶは周りの人間とこんな話をすることがあったという。
「男子の試合で遼くんが上位にきてるから、どうせ扱い小さいよねぇ。どうしたら新聞の裏一面とかで大きくなるんだろう」
「1日にホールインワン2回とか?」
「やっぱ50台で回ってこないとダメじゃない?」
もちろん冗談半分の会話であり、真剣に悩んでいたわけではない。しかし、そこに女子ツアーを代表する選手としての気概も透けて見えるのだ。
ゴルフを扱う新聞の紙面も、テレビの放送時間も決して無限大ではない。石川遼が華々しい活躍を見せれば、それに割かれるスペースや時間は必然的に多くなる。
昨年の諸見里は石川と同週での優勝が2回あった。諸見里の扱いが決して小さくなくとも、石川の方はさらに大きくなる。2度目のアベックVで互いに賞金ランクトップに立った9月のゴルフ5レディースの時には、「よし、(年間獲得賞金では)遼くんには負けないぞ!」とその人気を逆手にとったコメントをしたこともあった。
もちろん諸見里は石川に嫉妬しているわけではなく、プロゴルファーとして純粋な敬意を抱いている。
「遼くんには見習うところもたくさんある。マスターズも見ていましたし、結果は残念だったけどカッコよかった。予選落ちして泣いている時でも、皆さんが期待してくれたのに申し訳ないと言ったのがすごく立派でした。やっぱりゴルフ界を引っ張っている一流選手だと思います」
石川遼が活躍するほど女子ツアーも盛り上がる!?
4月のスタジオアリス女子オープンでツアー7勝目を挙げた有村智恵は、「去年の最初はヤバいと思ってました」と話すほど石川の活躍に激しい危機感を覚えていたという。
国内の女子ツアーは宮里藍や上田桃子といったスター選手が次々に米ツアーへと旅立った。そうした状況で男子への注目度が飛躍的に高まることで、女子の人気に翳りが出るのではないかと不安を覚えていたのである。
昨年6月の最終週、プロミス・レディスは諸見里がぶっちぎって終盤は優勝争いへの興味が薄れてしまった。その裏で石川は劇的な展開でシーズン初優勝を勝ち取っていた。有村はこの時の男女の視聴率とギャラリー数をわざわざ比較してみて、自分の考えが取り越し苦労だったことに気づいたのだった。
視聴率は男子には及ばなかったものの、女子も2ケタの高い数字をマーク。同じ兵庫県内での開催だったにもかかわらず、ギャラリー数も男女ともに前年より増えていた。
限られたパイを奪い合うわけではなく、相乗効果でゴルフ界全体が活気づく。いまでは石川の活躍を女子ツアーへのカンフル剤として捉えている。
「男子が盛り上がると女子も盛り上がる。男子を見た人はそのまま女子の中継も見てくれる。だから、遼くんを見た人たちが、女子の試合はどうなってるんだろうって私たちのプレーを見て、幻滅しないようにしっかり頑張っていきたいです」