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二刀流こそが大谷翔平のリズムだ。
打つと投げるの好循環が復活中。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byAFLO
posted2018/08/12 09:00
打撃好調の大谷翔平だが、徐々にキャッチボールの強度を上げ、投手復活に向けて準備している。
「一刀」であることの違和感か。
ところが、6月初旬、右肘に異変が生じ、二刀流調整がストップした。投手としてノースローを強いられる一方、打者としては復帰へ向けて順調なステップを踏んだ。ただ、幼い頃から「投げて、打つ」ことを、ほぼ同時進行させてきた大谷にとって、「一刀」だけを磨くことに違和感があっても不思議ではない。
ブルペンで投球練習をすることなく、野手として打撃練習をこなす日々。本来は投球へ向かって柔軟にリードするべき右肘を、無意識にかばうためなのか、タイミング、スイング軌道に、明らかなズレが生じていた。
その一方で、上昇の気配は、投手としての歩みに見え隠れしていた。球宴休みを経て、キャッチボールの距離が70メートルまで伸び、さらに近距離投球の強度も日増しにアップさせていた。当初、ヒジを固定したような投げ方にも、少しずつ柔軟性が加わり始めた。
初の1試合2本塁打を放った3日の試合前には、これまで以上に右腕を強く振った。一度は辞めようとした投球を、さらに数球追加し、笑顔で投げ終えたのは、おそらく偶然ではない。
「何とか早く元のリズムに戻って」
投手としての状態が上がれば、おのずと打者としても好結果につながる――。
「まだシーズン途中。僕自身、投げられていないですし、チームにも迷惑をかけているので、何とか早く元のリズムに戻っていけるように、やっていきたいとは思っています。その過程で(本塁打を)2ケタ打てるというのはいいことだと思うので、もっともっと打てるように頑張りたいと思います」
本塁打を打つためだけでもなく、時速160kmの速球を投げるためだけではない。
投げられなければ、打てない。逆に、打てれば、投げられる。
エンゼルスが優勝争いから脱落した今、復帰を焦る必要もない。
大谷が求めているのは、少年期と変わらない「元のリズム」。
周囲が騒ぐほど、「二刀流」の難しさを、大谷自身は、おそらく感じていない。