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陸上競技エージェントという仕事。
ツアー出場、レーン順も彼ら次第!?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byKyodo News
posted2018/07/29 11:00
桐生祥秀も出場したダイヤモンドリーグ上海大会は、オランダのエージェンシーが主催。
出場交渉、出場料、レーン交渉まで。
陸上のエージェントの特殊性は、DLをはじめとした賞金レースの試合出場と出場料の交渉、そして短距離種目に関しては走るレーンの交渉まで行う点だ。
「レーンまで!?」と思われるかもしれないが、短距離種目ではレーンが勝敗を左右することも多い。200mや400mなどのレースは内側のレーンはカーブがきついため多くの選手が回避したいところ。そのためエージェントは選手の特性や希望に合わせてレーンの交渉も行うことが多い。
出場料に関してもエージェントの腕の見せどころになる。話題になる注目選手、そして世界選手権や五輪などでメダルをとった選手などは、主催者側からの出場依頼、いわゆる招待という形で大会に参加するが、彼らには出場料が支払われる。
限られた予算内でやりくりする主催者と多額の出場料を要求するエージェントは試合前に熱い戦いを繰り広げたり、また有力選手を多数抱えるエージェントは、「金メダリストのA選手を出すから、若手のB選手も出してほしい」というような交換条件をつけたりと、なかなか興味深い交渉が行われているのだ。
制度化されていないDL出場資格。
「ダイヤモンドリーグに出たい」
世界で戦うことを目指す選手なら、DLは世界選手権や五輪と並んで、目標とする大会の1つだろう。しかし、ウサイン・ボルトのようなレベルの選手なら希望する大会どれでも出場が可能だが、多くの選手にとって出場まで漕ぎ着けるのが至難の業だ。その理由は、出場資格の獲得方法が制度化されていないからだ。
同じ個人競技のゴルフやテニスは明確なランキング制が設けられ、下部大会からランキングを上げていった選手たちが、メジャートーナメントで戦う権利を獲得できる。出場資格の獲得方法などはとても明確で、公平だ。
陸上も今季からランキング制ができたが、上位にいる選手が出たい大会に出られるわけではない。大会の開催国、協賛しているスポンサー、主催者とエージェントの関係性など様々な要素が出場可否に関わってくる。