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ブンデス2部は8月1週にもう開幕!
酒井高、伊藤のHSVは即昇格なるか。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/07/26 16:30
ハンブルガーSVには酒井高徳と伊藤達哉も在籍する。初の2部でどんな戦いを見せるのか。
酒井や伊藤らが残留する一方で。
ハンブルクはドイツ国内でベルリンに次ぐ第2の都市規模と言われていますし、昨季の観客動員数もリーグ6位の1試合平均50703人で、その人気は衰えていません。しかし成績低迷の影響は少なからずあり、クラブの財政難も取り沙汰されています。2部を戦う今季のHSVは、チーム編成予算を5500万ユーロから2800万ユーロへ削減しなければならないようです。
HSVは過去に欧州王者にも輝いた名門で、その人気も不変。港湾都市である街には観光客がひっきりなしに訪れ、歴史的建造物が多く、生活環境も充実しています。その影響もあるのか、所属選手のクラブ愛は相当なもので、昨季キャプテンを務めた酒井高徳は、降格が決まった最終節の直後にチームへの残留を宣言しました。
他にもMFアーロン・ハント、MFルイス・ホルトビー、そして昨季ブレイクしたMF伊藤達哉なども2部での戦いに身を投じる覚悟を決めています。
ただ、先述したように財政難に陥ったクラブは高年俸の有力選手の売却も模索していて、先のロシアワールドカップにも出場したセルビア代表MFフィリップ・コスティッチや、負傷中のギリシャ代表DFキリアコス・パパドプーロスなど、主力級で26歳前後の選手を放出することで資金の確保を目指そうとする考えも見え隠れしています。
18歳アルプはバイエルンを断り……。
ネガティブな話題の多いHSVですが、明るいニュースもあります。
昨季プロデビューを果たした、ユース出身の注目株。クラブ史上最年少の17歳9カ月22日で初ゴールを挙げたFWヤン・フィーテ・アルプが、バイエルンなどからのオファーを蹴ってHSVとの契約延長を決めたのです。
アルプが初得点を決めたヘルタ・ベルリン戦を観戦しましたが、恵まれた体格から繰り出す正確なトラップと強烈なシュートは絶品の一言。彼が将来のエース候補であることは歴然なのですが、そんなアルプが今回、こんなコメントを残しています。
「2部に降格したこのチームを去るなんてオプションは僕の中にはなかった。辛い時期にあるからこそ、僕はハンブルクと道を分かちたくはない。クラブが本来あるべきところへ戻ってもらいたい。だから早い段階からハンブルクと共に歩むこの道が、まだ終焉に来ていないということは、はっきりとしていたんだよ」
18歳の男の泣かせる言葉じゃないですか。現在のHSVのスローガンは『NUR DER HSV(HSVのためだけに)』。今季は厳しい1部昇格争いに臨むことになりますが、その前途に期待したいところです。