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公式カメラマンだけが踏み入れた
サンウルブズの“聖域”ロッカールーム。 

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近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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photograph byAtsushi Kondo

posted2018/07/26 07:00

公式カメラマンだけが踏み入れたサンウルブズの“聖域”ロッカールーム。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

中央で祈りを捧げているのは南ア出身のヴィリー・ブリッツ、ヘンカス・ファン・ヴィック、ヴィンピー・ファンデルヴァルトの3選手。

最終戦のキーワード「Last Hunt」。

 サンウルブズは毎試合、1つのキーワードを掲げて次の試合への準備を行う。

 Last Hunt。シーズン最後のキーワードは「最後の狩り」だった。ピッチ上の15人が1つとなって獲物を仕留める。いかにも狼たちの集団らしい言葉だ。

 相手のレッズはおよそ2カ月前の秩父宮ラグビー場で、サンウルブズが今シーズンの初勝利を収めた相手だった。63-28、スコアもそして内容も完璧な試合だった。

 しかし試合前日夜のミーティングで、選手たちを前にディフェンスコーチ、スコット・ハンセンは手短にこう伝えた。

「レッズは君たちにどれだけの屈辱を与えられたか忘れてはいない。明日の試合は間違いなく全力で我々を潰しに来る。特に、最初の20分間、ここを全力で仕掛けて来るはずだ」

 スコットの予言通り、レッズは前半から猛烈なプレッシャーをかけてきた。しかし、サンウルブズもまた冷静にそのプレッシャーに対峙し、相手の足が止まった時点で仕掛け返そうとしているように見えた。前半35分で22-13、相手の脚は後半必ず落ちてくる、サンウルブズに間違いなく勝算はあった。

前半途中で1人少なくなる逆境。

 しかしながらその2分後、サンウルブズのエドワード・カークが密集の中で相手選手の頭に向けて故意に拳を見舞ったとして、一発退場を宣告される。厳しいジャッジだった。厳しすぎるジャッジだった。

 アクシデント、あるいは故意、レフェリーの判断をどう捉えるかはそれぞれがどういう立場に立っているかによる。僕にはカークのそれが悪質なプレーには見えなかったが、ニュージーランド人のレフェリーにはそう見えた。ポケットから赤いカードを出す彼に躊躇はなかった。

 今季サンウルブズのキャプテンに指名された流大に言わせれば、このチームはまだ1人少ない状態でもスーパーラグビーのチームに勝てるだけの力はない。あるいは、スーパーラグビーに参加する15チーム中、前半36分に1人少なくなった状態で逆転劇を演じられるチームはほぼいない。

 80分が経過し、スコアは48-27、サンウルブズは結局3勝で3年目のシーズンを終えた。

【次ページ】 「あと数試合、勝てたっすね」

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