ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
モドリッチ、泣き顔でのW杯MVP。
誰よりもタフな天才に世界が虜に。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2018/07/18 11:30
W杯は勝者以上に印象深い敗者が出るものだ。ロシアでのその立ち位置はモドリッチだった。
泣き顔のモドリッチは初めて見た。
しかし時に現実の勝負は残酷だ。敗因を求めるなら、日程の不利と疲労、選手層の薄さ、CBの質、相手攻撃陣の破壊力、相手守備陣の卓越、あとは運か……。そしてモスクワにも、美しい敗者が生み出された。
泣き顔のモドリッチは初めて見た。ロシア大会を象徴するシーンのひとつとして、今後もこの天才が感情を押し殺そうとしている姿を見ることになるかもしれない。
大会後、彼には偽証罪(ディナモ・ザグレブの元会長の裁判で虚偽の証言をしたというもの)に関する裁判の続きが待っている。クロアチアでフットボールは影響力が大きすぎる故に、時として政治的に利用されることがあるという。それでもモドリッチが様々な困難や重圧を払拭して、多くの人々をひとつにまとめたのは間違いない。そして、たくさんの中立的なファンを虜にした。
今はただ、彼の心身の傷が癒えるまで、そっとしておいてあげられないものだろうか。