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「まだ走れます!」とクロアチア。
3戦連続の延長戦を制して決勝へ。 

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杉山孝

杉山孝Takashi Sugiyama

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photograph byGetty Images

posted2018/07/12 11:25

「まだ走れます!」とクロアチア。3戦連続の延長戦を制して決勝へ。<Number Web> photograph by Getty Images

クロアチア初の決勝進出を喜ぶモドリッチ。今大会の出場時間は6試合604分となった。

「本当のDFではない」ところを突破。

 後半に入り、潮目が変わる。

 54分、ハーフウェーラインを越えてスローインを受けにきたストーンズから、アンテ・レビッチがボールを奪取。カウンターで冷や汗をかかせた。

 レビッチはその4分後、今度は相手をうまく食いつかせる。ウォーカーを3バックからサイドに引きずり出すと、縦パスをワンツーではたいてイバン・ストリニッチに空いたスペースを譲渡。久々の良い形でのボックス内への侵入へと導いた。

 何度もジャブを打つことによって、イングランドのガードを緩ませた。ヘンダーソンと最終ラインの隙間にルカ・モドリッチが入り込んだプレーから、ボックス内でのイバン・ペリシッチのシュートへとつながったのが65分のこと。

 その3分後、ペリシッチの次のシュートが大きく試合を動かすことになる。

 左サイドからイバン・ラキティッチを経由して右へ展開。また左へと揺さぶったシメ・ブルサリコのクロスを、ペリシッチが蹴り込んだ。

 先制点を奪ったトリッピアーを背後から追い越し、智将アーセン・ベンゲルが「本当のDFではない」と警鐘を鳴らしていた本来右サイドバックのウォーカーの眼前に体を入れ、左足の外側で蹴り込んだ。

3戦連続の延長戦、しかし交代は90分間なし。

 殊勲の背番号4は、前半から道筋を示していた。押され気味だった19分と23分には、「流れを変える」というメッセージを込めるように遠目からシュート。33分には高い壁の手前に入れる低めのアーリークロスという、新しいアイディアを提示した。

 レビッチ、ペリシッチの両翼は終始、労働の必要性を表現し続けた。72分、高く跳ねたボールの先には3人のDFとGKがいたが、それに構わないレビッチの突進がクリアミスを誘い、こぼれ球を拾ったペリシッチのシュートがポストを叩いた。

 ペリシッチは82分にも相手の死角から忍び寄り、GKへのバックパスを奪いかけている。

 延長戦開始までに、イングランドは2枚のカードを切っていた。対して3戦連続延長戦のクロアチアがようやく動いたのは、延長早々に右脚付け根を痛めたストリニッチ交代時。まるで負傷以外の交代が認められなかった、20世紀のラグビーのようだった。

【次ページ】 理論を超えた力と走りを見せたクロアチア。

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