ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
「まだ走れます!」とクロアチア。
3戦連続の延長戦を制して決勝へ。
posted2018/07/12 11:25
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph by
Getty Images
敗れたイングランドの選手たちよりも先に、目を潤ませたように見えた。観る者の心を揺さぶりながら、クロアチアが初の決勝行きのチケットをもぎ取った。
若きイングランドは、恐ろしく効率的だった。
3バックの中央で、足下の技術が高いモダンなDFジョン・ストーンズが前後に出ながら角度を作る。その1列前ではジョーダン・ヘンダーソンが監視の目を光らせつつ、相手のDFライン裏の穴をねらっている。
守備時には両ウイングバックが下がって5バックを形成。堅固な壁が、ピッチの横幅を埋める。2列目のジェシー・リンガードとデル・アリも下がって、5-3-2の城壁が完成。驚異的な加速力があるラヒーム・スターリングへとロングパスを送って、攻撃へと転じる。その瞬間と道筋を図り続けた。
スマートなイングランド、クロアチアは無骨。
開始5分での先制点は、その効率性の象徴のようだった。カイル・ウォーカーのロングパスのこぼれ球を拾ったリンガードが、華麗に1回転。ペナルティエリア手前へのパスに走り込んだアリが倒されて獲得したFKだ。ややコースは甘かったが、キーラン・トリッピアーの蹴ったチーム初シュートは、あっさりとネットを揺らす先制点となった。
この日、全身真っ白のイングランドは、どこまでもスマートだった。一方、120分後のクロアチアは、イングランドよりもイングランドらしかった。
想起させたのはもう1つのフットボールだ。不屈の闘志を示すラグビー選手のように、彼らの黒いユニホームは汗と泥にまみれていた。
先制されたのは3試合連続だった。耐性を示すとばかりに焦りなく、クロアチアは前に出続けた。低く構えた5枚の壁に何度弾かれようと、サイドを駆け、ゴール前で体を張り、愚直に攻めを繰り返す。ガードを固めてカウンターだけを狙うヘビー級に対し、とにかく手数を出し続けた。