球道雑記BACK NUMBER
米マイナーからDeNA電撃入団。
中後悠平の知られざる「父の顔」。
posted2018/07/07 11:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
私事で恐縮だが、筆者には今年2歳になった息子がいる。
覚えたての僅かな単語と、解析不能の言葉を使って一生懸命に「うにゃむにゃ」と……。親の目を盗んではマンションのベランダに忍び出て、奇声をあげながら毎日走り回っている。
親と一緒にプロレス中継を見続けた影響なのか、それを真似ては高いところからダイブする癖もある。言葉で言い聞かせて理解するのはまだまだ先のようで、毎日がヒヤヒヤものだ。
約2年半のアリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下マイナーでの単身生活を終えて、横浜DeNAで3年ぶりのNPB復帰を決めた中後悠平にも幼い2人の子供がいる。
シーズンオフ、帰国した彼に取材で会うと、必ずと言っていいほど互いの子供の話になる。
「今日2人で初めて公園に行ってきたんですよ。まだまだ前傾姿勢だけど一生懸命に立つでしょ。よいしょって。でも段差とかあると、見ているこっちも怖いじゃないですか。今の(転んだ時)も、石にぶつかっていなかったからよかったんですけど、平地で歩かせないとやっぱり怖いですよね」
携帯電話で撮影した動画を見せながら、目尻を下げ、頬を緩ませ、息子の成長を何よりも喜んでいる。家族思いの父親の姿がそこにあった。
「こっちに帰ってきたくなかったんです」
ある年、和歌山で行っている自主トレが終わり、自宅がある神奈川県に一時帰宅した彼は、ふとこんな本音を漏らした。
「やっぱり寂しいですよ。だからこっち(自宅)に帰ってきたくなかったんです。正直、自主トレ先から、そのままアメリカに行きたかったくらいですから……」
車を運転しながら、そう話す彼の瞳が少し潤んでいるようにも見えた。