サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
W杯直前まで両国共に最悪のはずが……。
日本「突破」、韓国「敗退」の理由。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byGetty Images
posted2018/06/30 11:00
主審の笛が吹かれた瞬間……前回王者ドイツのグループリーグ敗退が決まり、韓国代表は見事に“事故”(本文参照)を起こした。
韓国の不運は、負傷者が続出したこと。
チームはこの試合を「新スタート」と位置づけ、メンタルを入れ替えた。
4-4-2のフルメンバーで臨み、特に右サイドから秀逸な攻撃を見せた。左利きのMFクォン・チャンフン(ディジョン)が盛んにカットインし、その外をFWイ・グノらが突いた。大黒柱のソン・フンミンも2ゴールの活躍を見せた。大会7カ月前のことだ。日本はハリルホジッチ体制下でフランスとベルギーに遠征、ブラジルに1-3、ベルギーに0-1と連敗を喫していた頃の出来事だ。
しかし、ここから「コロンビア戦の形を維持し、発展させる」という手法が成り立たなかった。シン監督が「プランB」とした3バックのテストにこだわったこともあるが、結局は「コロンビア戦の戦いに戻す」ということも成り立たなくなる――負傷者が続出したのだ。
上記のクォン、イに加えCBのキム・ミンジェ、左サイドバックのキム・ジンス(いずれも全北)が大会前に離脱。なかでも4-4-2のミソだったクォンの離脱は痛手だった。
「選手は今、日本のサッカーを思い出している」
負傷者のあるなしは予測不可能だ。ここを論じてもまた意味がない。しかし、事実からこの点は抽出できる。
「あの頃は良かった、と思って戦うかどうか」
西野朗監督率いるチームにはそういったものが一切なかった。大会直前のパラグアイ戦を除けばほとんどが“悪”。
いっぽう、ロシアから帰国後、日本でテレビを観ていると、ヴェルディユース出身の俳優・竹内涼真が現地の手倉森誠コーチに突撃取材していた。こんなやり取りが放映されていた。
――ハリルホジッチ監督と西野監督、違うところはどこですか?
「国籍、だね」
なかなか記者の立場からはやりづらい“ぶっちゃけ質問”だった。そのあと、手倉森コーチがこう言葉を続けた。
「選手は今、日本のサッカーを思い出している、というところだね。もともと教わってきたのは、ボールを持つというサッカーだから」
思い出していく、というのは「先を見て上昇していく」とも言いかえられる。
これが、岡田ジャパン時代の「守備的サッカーへの転換」のような、「大会直前での劇的な変化」だったのではないか。振り返る過去がなかったから、先に行くしかなかったというか。