サッカーの尻尾BACK NUMBER
メッシロナウド論争がW杯で再燃。
シメオネ「平凡なチームなら……」
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/06/30 12:30
別格の存在であるにもかかわらず、ロナウドはいつも感情を露わにしてチームを鼓舞する。それがポルトガルの一体感を生んでいる。
ロナウドは周囲に頼られ、メッシは依存される。
今大会を見ても、ポルトガルはロナウドのチームだ。彼がいなければ並のチームに過ぎない。2年前のユーロ優勝も、他を圧倒する強さというよりも結束で勝ち上がっていき、最後はエデルというラッキーボーイの出現で栄冠を手にした。
その圧倒的なカリスマはチームの団結においても不可欠だ。2年前のユーロ決勝、交代で下がったロナウドがベンチ前で監督よりも目立つジェスチャーで指示を出していたのは象徴的だ。その強い個性がチームをひとつにしている。
今大会の合宿中にも、若手のグエデスやシウバらと積極的にコミュニケーションをとっている。初めてのワールドカップとなる彼らに、この大会がどんなものかを教えるかのように。彼についていこう、という空気は自然と生まれている。
一方でアルゼンチンは、メッシに全てをやってもらおうという過度な依存がある。メッシがいるから最後はなんとかしてくれるだろう――選手のそんな思いが見え隠れする。
ロナウドは周囲に頼られ、メッシは周囲に依存される。
他選手との間に差があるようなチームであれば、能力的な部分よりも、強烈なキャラクターを持つロナウドの方が影響力が強く、チームをけん引できるのかもしれない。
エースの爆発だけがポルトガルを特別にできる。
18万票以上を集めたマルカ紙のウェブアンケートの結果では、61%がロナウドを選び、メッシは39%だった。同紙がマドリードのメディアであることは差し引いて考えるべきだが、それでも平凡なチームならロナウドと答える人の方が多いのは間違いなさそうだ。
今ワールドカップでも、ロナウドはほとんどひとりでポルトガルを決勝トーナメントに導いた。
ベスト16の相手はウルグアイ。スアレスやカバーニという、一流のアタッカーを擁する国同士の勝負になる。
「ロナウドが点を取れば勝ち、無得点に終われば敗れるだろう。とてもシンプルだ」とテレビ局SICのヌーノ・ルスはいう。
左右両足にヘディング、フリーキックにPK。流れの中でもセットプレーでも強みを発揮するロナウドは、再びネットを揺らすだろうか。
“平凡な”ポルトガルが上に進むために必要なのは、今回もエースの爆発でしかない。