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5年間の海外での努力を実らせて。
藤岡佑介、初GI制覇までの物語。
posted2018/06/29 07:30
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Photostud
2018年も宝塚記念を終え、前半のGIシーズンは一段落ついた。
最近の傾向として外国人騎手の活躍が目立ち、今春のGIもクリストフ・ルメールが3勝、ミルコ・デムーロが1勝と相変わらずの“うまさ”を披露した。
しかし、そんな中、日本人ジョッキーの活躍も目を引いた。日本ダービーを初めて制した福永祐一を筆頭に、いずれも経験豊富な手綱捌きで外国人ジョッキーを差し切ってみせた内田博幸と岩田康誠、人気薄ながら混戦を勝ち切った戸崎圭太や幸英明、ハナ差の叩き合いを制した川田将雅に17年ぶりのGI制覇を飾った和田竜二。そして、自身初のGI優勝を飾ったのが、今回、紹介する藤岡佑介だ。
「馬を助ける獣医になりたいと」
1986年3月17日、滋賀県栗東市で藤岡は生まれた。出身地からも分かるように父親はホースマン。現在は調教師で、佑介が生まれた当時は持ち乗り厩務員をしていた藤岡健一だ。
そんな出自だから幼い頃から騎手を目指していたかと言うと、そうではない。藤岡本人が明かす。
「騎手にこだわってはいませんでした。ただ、父親と同じ厩務員か、怪我をした馬を助ける獣医になりたいとは考えていました」
競馬学校・騎手課程を受験した時でさえ、気持ちが固まっていたわけではなく、ダメならダメで仕方ないくらいの軽い気持ちだった。
それでも合格すると、2004年には無事、騎手デビューを果たす。この頃になると、さすがに心構えは変わったのか……。
「もちろん一所懸命に頑張ろうという気持ちにはなりました。ただ、それでも他のジョッキーに比べると甘く考えていたかもしれません。成功したいという気持ちはあったけど、失敗したら失敗したで他の道へ進めば良いぐらいに考えていたかもしれません」
それだけにデビュー後の活躍には本人も驚いたようだ。