ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
トルシエが脱帽する西野采配。
「柴崎や乾の先発に意志を感じた」
posted2018/06/24 07:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
フィリップ・トルシエは、日本が2大会ぶりのワールドカップ勝利を収めたコロンビア戦をどう見ているのか。
西野朗監督の勝利、日本サッカーの勝利と評する理由はどこにあるのか。トルシエが語った。
今大会の勝利の鍵はセットプレーである。
――コロンビア戦、試合は見ましたか?
「見た。信じられなかった」
――どう分析しますか?
「私が思うに、これは日本の勝利にしっかり値する試合だった。たしかに85分間を11人対10人で戦うのは容易であるともいえるが……。
この試合では、3つのセットプレーから得点が生まれている。PKとFK、CKからだ。今大会の特徴のひとつとして、開幕から多くのゴールがセットプレーによって決まっている、という現象がある。今大会、しくじった2本のPKまで含めて、セットプレーが違いを作り出しているといえる。これが、おそらく勝利を得るための今大会の非常に有効な手段なのだろう。
前半の日本は、さらに違いを作った。ただ、いくつかの得点のチャンスを作り出し、試合を終わらせることすらできたはずだった。先制点の後にも何度か得点の機会はあったが、日本の選手たちにここで試合を決めてやるという気概は見られなかった。相手の気持ちを折ろうとする意志も感じられなかった。
だから、私はハーフタイムにはむしろ少し不安を感じたほどだ。日本が優位を生かすチャンスを、みすみす逃していくように見えたからだ。先制点を挙げた優位、人数がひとり多い優位を。
日本代表の選手たちは、パーソナリティーを欠いたうえにナイーブさを露呈したようにも見えた。コロンビアの同点ゴールを見た瞬間には、せっかくの機会を台無しにしてしまったと思ったほどだ。
しかし後半はとても成熟したプレーを見せた。逆にコロンビアは、今日は勝てないと感じたのだろう。引き分けならば悪くはないと彼らは思ったはずだ。だから試合をそのまま終わらせようとした。疲労も明らかだった。最終的には……日本の方がずっと成熟しており、目的のために試合をよくコントロールしていたと言えるだろう」