サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
元代表・吉原宏太から西野ジャパンへ。
「だからすぐ次に夢をつくらないと」
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJFA
posted2018/06/19 11:00
コパ・アメリカでA代表としてプレーする吉原宏太。当時、W杯での連続決勝T進出国だったパラグアイに0-4で負けた。
「もっと、自分のプレーを発揮してほしい」
自分はパラグアイとの試合で自分の特長を出しきれずに終わった。
もしかしたら代表に選ばれただけで満足していたのかもしれない。
心の片隅では「早くオリンピック代表や札幌に帰りたい」と考えていた点が甘かったのだ。2000年からガンバ大阪に移った後に自身の成長に停滞を感じ、そう思ったことがある。
そこに気づいて、練習により厳しく打ち込んだ。しかし吉原には2度とそれを取り戻す機会が与えられなかった。
引退後、イベントで中山雅史と一緒になり、その心情を打ち明けたことがある。中山はこんな返事をしてきた。
「俺なんか、代表に呼ばれて『何かここに爪痕を残そう』ということだけを考えていたよ。一番下手だったから」
実際、代表に選ばれたら何をするのか。
吉原は最近の日本代表についてこう考えている。
「もっと、自分のプレーを発揮してほしいと思うんですよね。最近の選手はなんだか、監督にアピールするために、自分の苦手なところまで頑張っているように見える時があります。自分のいいところを見てもらって選ばれたんだから、そこを発揮することを考えたらいいと思うんです」
「だからすぐ次に夢をつくらないと」
誰ひとりとしてやすやすとレギュラーを譲ってはくれない場所。だからこそ、考えすぎても仕方がない。
まずは自分の特性を発揮することを考える。
そして何より、すぐ次の目標に貪欲になること。たとえば今、行われているワールドカップに出た選手たちはまた1つの目標を叶えることになる。だからこそ、すぐに次だと。
「夢が叶う、なんてね、それはそれで虚しいものですよ。その瞬間に夢がなくなるんだから。だからすぐ次に夢をつくらないと」
吉原は19年前のあの夏の日の世界の衝撃から、身をもってこれを言い切れる。
キャップ1の男たちの甘く苦い経験も積み重なった先に、ロシアのピッチに立つ日本代表がある。