濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
団体戦大会QUINTETが呼び込む
“異能”と“個”を超えるチーム力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2018/06/13 07:00
桜庭和志、審判委員長の中井祐樹に祝福される優勝チーム「カルペディエム」のメンバー。左からデヴィット・ガルモ、松本義彦、岩崎正寛、杉江“アマゾン”大輔、世羅智茂。チームとして、個人として見事な連携の勝利だった。
48歳の矢野卓見が見せた、驚異の粘り。
大将戦、所チームから登場したのは48歳の矢野卓見だった。
大将戦開始時点で所チームは「指導」ポイント1つ分のリード。矢野が岩崎正寛を相手に、ポイント差をキープして終わればチームの勝利が決まるというシチュエーションだ。
「さすがに矢野が勝つのは難しいかもしれない。でも守り切ることならできるかも」
そんな予感で、超満員札止めの場内は沸き返った。後半は完全に劣勢、矢野は最終的に指導ポイントで並ばれてチームも敗退したのだが、粘りに粘る姿は印象深かった。
攻防だけを切り取ってみれば「スタミナ切れでグダグダのドロー」、「岩崎も取り切れなかった」となるのだが、シチュエーションがこの試合を好勝負にしたのだ。
想像力を刺激する“U系”チームも。
所と伊藤は現在の練習パートナー。所、今成、小谷直之、矢野は「ZST4兄弟」と呼ばれ、所がブレイクする前からの盟友だ。
QUINTETで自身のチームを編成することになり、所が真っ先に思い付いたのが「ZST4兄弟」リユニオンだという。
「自分が取らなきゃいけない試合でしたね。申し訳ないです。でも、このメンバーで闘えたことには大満足です」
試合後の所は言っている。
かつて独自のテクニック、試合スタイルから“東洋の神秘”とも呼ばれた矢野。そんな“異能”が48歳にして脚光を浴びるのもQUINTETの魅力だろう。
もう1つの1回戦でTEAM HALEOに敗れたTEAM U-ZUKIDOは、リーダーの中村大介に加え佐藤光留という“異能”も擁していた。
チーム名は、田村潔司のもとで育った中村の道場「夕月堂本舗」から。「夕月=U好き」であり、このチームはプロレスリング、UWF、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンをルーツとする選手の集団だ。佐藤はパンクラスMISSION所属にして元DDT王者、現在の主戦場は全日本プロレス、そしてキャッチフレーズは“変態”である。