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イングランドの問題児スターリング。
厚顔の10番がタトゥーに込めた想い。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2018/06/10 11:30

イングランドの問題児スターリング。厚顔の10番がタトゥーに込めた想い。<Number Web> photograph by Getty Images

マンチェスター・シティではグアルディオラ監督のもとで急成長したスターリング。騒ぐ周囲を実力で黙らせられるか。

W杯前の親善試合での先発起用に物議が。

 しかし、代表を率いるガレス・サウスゲイト監督は、個人マターであるタトゥーを問題にはせず、合流遅れにも注意とチームへの謝罪で片をつけた。そして、6月のテストマッチ初戦となったナイジェリアとの親善試合(2-1)でスターリングを先発起用。当然、国内では指揮官に対しても「甘い」との指摘があった。

 だが、先入観を抜きにすれば、サウスゲイトの対応は妥当だったと見るべきだろう。「けじめ」としてベンチを命じていれば、国内メディアでスターリング嫌いの意見が前面に出て、まだ23歳へのバッシングが続いていたと思われる。

 そもそも、予定より半日遅れの代表合流は故意の仕業ではなかった。タトゥーには、幼い頃に父親の命を銃で奪われた者として、「絶対に銃には触れない。自分が撃つのは右足のシュート」という極めて私的な想いが込められていたのだと、当人がソーシャルメディアを通じて説明している。特別な想いや決意を体に刻む感覚がある持ち主としては、理解できる部分もある。

10番を与えられたほどの高い期待度。

 スターリングのタトゥー・コレクションには、左腕に彫られた、ボールを片手にウェンブリー・スタジアムを見つめる少年の後ろ姿もある。5、6歳で移民した当初、ウェンブリーから4キロと離れていないニーズデンに住んでいた自分自身の姿なのだろう。

 代表での将来を夢見ていたジャマイカ生まれのサッカー少年は、犯罪者ではなくプロ選手への道を歩み、17歳でイングランドA代表デビューを果たしている。ちなみに、前腕に描かれた少年の背番号は「10」。スターリングは、今夏のW杯代表メンバーとして「イングランドのナンバー10」になる夢も実現したわけだ。

 先のナイジェリア戦で「ベンチスタートも考えた」と言う指揮官だが、10番を与えたことから分かるように、本来であれば迷うことなくスターリングを先発起用していたのだろう。

 当人はバッシングにも耐え得る「面の皮」を持っていることもあるが、何より、攻めの姿勢を基本とするサウスゲイトのイングランドには欠かせない攻撃力の持ち主である。ブラックジョークの得意な国内紙風に言わせてもらえば、監督が先発メンバー表に名前を「彫り込みたい」主力であることは間違いない。

【次ページ】 今季リーグ戦では18ゴール11アシスト。

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