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ポジショナルプレーで開幕10戦無敗。
東京Vロティーナ監督は何を授けた?
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/05/02 17:00
奮闘を続ける東京Vのロティーナ監督(左から2人目)。その隣がコーチのイバン・パランコ氏。
予測力がストロングになってきた。
試合で見られた不具合を持ち帰り、トレーニングで修正することの繰り返し。地道な作業の積み重ねで、ピンチに動じない組織を築いてきた。
「そうしてストロングになってきたのが予測力。後ろから見ていて、予測のスピードが相手の動き出しを上回っていると感じることが度々あります。その結果、未然に防げている危機は多いですよ。とはいえ、失点してもおかしくないシーンはいくつもありますから、まだまだ向上していかないと」
そう言って上福元は唇を引き結んだ。
完全無欠の戦術は存在しない、が。
ロティーナ監督が右腕のイバン・パランココーチとともに推し進めるのは、ポジションプレー(ポジショナルプレーとも)と呼ばれる、欧州最新トレンドの戦術だ。ピッチを縦に5分割する5レーン理論を実践し、選手間の距離を適切に保ち、パス回しの基盤となるトライアングルを効率的に生み出すように試みてきた。
「うまく運用できれば、攻守すべての局面において優位性を確保できる。難しいことではありますが、その可能性を見込んで採用しています。もっとも、サッカーの世界において完全無欠の戦術は存在しません。ただ、私はこのプレーモデルが成果を挙げるはずだと信じて取り組んでいます」
選手に求めるのは、プレーを簡潔に、かつ正確に実行すること。ポジションが後ろになるほど個人の味つけは控えめを好む傾向が見られる。
そこで、めきめき頭角を現してきたのが、東京Vのアカデミー出身でプロ5年目の畠中槙之輔だ。184センチの長身を生かした空中戦の強さ、ガツンと腰を入れてボールを奪い取れる強靭なフィジカルを持ち、ここにきてフィード力にも一段と磨きがかかってきた。
大宮戦、東京Vは今季初の複数失点を喫した。1点を追うゲーム終盤、畠中はマテウスにかわされ、懸命に追走するもあえなくゴールを叩き込まれている。