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上田康太が名波と俊輔から学んだこと。
磐田を離れた左利きが岡山を牽引。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/28 08:00
上田康太のフリーキックには、たしかに俊輔の雰囲気を感じる部分がある。
移籍を告げると「それがいいかもな」。
憧れの人の指揮下で、同じ背番号をつけてプレーしているのに、なかなかピッチに立つことができない。言いようのない歯がゆさ、悔しさを経て、上田はシーズン終了後、磐田を離れることを決意する。
「自分を、より必要としてくれているところで輝きたい」という思いで選んだのは、大宮で同じように出場機会を失っていた2014年、開幕後に期限付き移籍してプレーした岡山だった。
J2リーグ35試合に出場し、トップフォームを取り戻した思い出のクラブ。上田が移籍先を告げると、名波は「それが一番いいかもな」と言って送り出した。
2人のレフティーを追いかけて。
4年前、期限付き移籍でプレーしたシーズンは28歳だった上田は、この5月で32歳になる。年齢を重ねてチーム内での立ち位置も変わった今季は、これまで以上にチームを引っ張ることを意識しているという。
「信頼してもらって、みんなが伸び伸びプレーできるような存在になりたいです。精神的に安心させることができるように。そのためには先頭に立ってプレーしなければいけないし、練習から違いを見せ続けなければいけないと思っています」
上位につけているとはいえ、まだ10試合。全42節の戦いは、まだ4分の3も残っている。「すんなりいくとは思っていません。絶対に厳しい状況はあるし、今後は勝たなければいけない試合、負けられない試合が増えてくる」
磐田のJ1復帰も、最終節の後半アディショナルタイムの決勝点で決まった。そのときピッチに立っていた上田の言葉には実感がこもる。
勝ち点に結びついた2本の直接FKでは、出場機会に恵まれなかった時期に学んだことも意識していた。
「少ないチャンスでどれだけ結果を出せるか、という状況が長かったので、ここで決めなければ、ということが、より分かります。そういう場面で結果を出せるかによって、選手の価値は決まる。その気持ちを常に忘れず、ここぞという場面で頼りになる存在であり続けたい」
練習から違いを見せ続ける。ここぞという場面で頼りになる存在であり続ける。それは、大きな影響を受けた2人のレフティーを追う道程でもあるだろう。