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3度の前十字靭帯断裂負った選手の物語。
札幌・深井一希の驚くべき「不屈の魂」。
posted2018/04/30 09:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「あの選手、怪我さえなければ良かったのにね~」
よくこういう言葉を耳にする。サッカー選手と怪我は切っても切れない関係性にある。日々肉体を鍛え上げているプロのアスリート同士がお互いの生活、そしてチームの勝利、個人の想いなどを懸けて激しくぶつかり合うのだから、当然ながら無傷のままで過ごせるわけはない。
怪我はサッカー選手にとっていわば宿命であり、避けて通れない道でもあるのだ。だが、その宿命の重さ、課せられる苦難の回数は、選手によって大きく差がある。
コンサドーレ札幌のMF深井一希は、あまたいるJリーガーの中でも重すぎる苦難を何度も課せられた選手の1人だ。
彼はこれまでのサッカー人生において、実に3度の前十字靭帯断裂という大けがを負ってきているのである。
3度も致命傷を負い、それを乗り越えた男。
前十字靭帯断裂は、サッカー選手の怪我の中でもかなり重い部類に入る。
前十字靭帯とは膝関節の中で、大腿骨と頸骨を繋ぐ強力な靭帯で、それが不安定な着地や無理な踏ん張りなどで断裂してしまうと、復帰までには最低でも6カ月以上の時間を要してしまう。
一度の断裂でも相当なダメージだが、深井は2013年に札幌U-18からトップチームに昇格してからこれまでの5年半で左膝2回、右膝1回の合計3回の前十字靭帯断裂を経験した。
「3回もやっている選手ってなかなかいないですよね。でも僕は今、こうしてプロとしてプレーし続けられている。このことで……何か新境地に達したというか、逆に幸せを噛み締められているんです」
3度の大怪我は彼をサッカー選手としてだけでなく、人間として大きく成長させたようだ。