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女子柔道界の超新星、17歳・素根輝。
兄との二人三脚で全日本を初優勝。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2018/04/29 11:00
大会後、支えてくれた兄(右隣)らと並び記念撮影する素根輝。幼少の頃からともに柔道に打ち込んできた。
練習パートナーはほぼ同体格の兄。
強さの秘密は豊富な練習量だ。福岡県久留米市生まれ。中学卒業時には多くの強豪校から誘われたが、地元で強くなりたいと自宅から通える久留米市立南筑高校に進学した。
平日は朝練習1時間、放課後に3時間弱、帰宅後は自宅の倉庫を改造したトレーニングルームで2~2.5時間、毎日欠かさずに稽古を続けている。ゴムチューブなどを使っての筋力アップにも余念がない。
練習のパートナーは福岡医療専門学校に通う22歳の兄・勝さんだ。自身とほぼ同じ体格である身長162cm、体重95kgの兄にも相手になってもらう乱取りは、4分×15本が基本メニューだが、20~30分“延長”するのが常。
「延々やります。納得するまでやります。試合前はもうやめておきなさいと言われることもあります」
誰にも負けない練習量という自信を胸に、今年は皇后盃全日本女子柔道選手権に初出場。大会前日には横浜市内でローストビーフの食べ放題に行き、「しっかり食べて、しっかり寝ました」と万全の準備で試合に臨んだ。
試合の合間には柔道整復師の資格を持つ勝さんにマッサージを受け、緊張をほぐしてもらった。決勝前は「笑って帰って来い」と言われ「絶対に勝って帰ってこようと思った。お兄ちゃんのためにも優勝したかった」という。すべての試合を終えた後、妹は笑顔を見せた。
国際大会でのポイント獲得率で届かず。
大会後に開かれた強化委員会では、国際大会の実績で劣っていたことで世界選手権78キロ超級の代表には選ばれなかったが、世界選手権の団体戦とアジア大会の代表入りを果たした。
全日本柔道連盟の金野潤強化委員長は「選考基準は世界で金メダルを獲得できる可能性が高い選手」と前置いて選考理由を説明。「朝比奈は国際大会で3連勝しており、外国人に対して強く、国際大会でのポイント獲得率が94.63%。素根は67.50%で、約30%の差がある」と指摘した。