“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ベガルタの快進撃を支える21歳。
謙虚すぎる万能FW、西村拓真。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/04/14 07:00
J1第7節終了時点で、2位につけるベガルタ仙台。その勝負強さで若さを感じさせないプレーを見せる西村拓真。
「僕には過去に立ち返っている時間はないし」
「高校選手権優勝、ニューヒーロー賞と、タイトルを獲るということはサッカー選手にとって凄く重要なことだと思います。でも、僕は振り返ることは全くないです。選手権優勝は3年生の力ですし、ニューヒーロー賞も期待賞。凄くありがたい経験だったことは間違いありませんが、僕には過去に立ち返っている時間も暇もないんです。ただ今に集中するのみです。日々の練習にしっかりと打ち込むだけです」
迎えた2018年。
リーグ第4節までは途中出場だった西村は、第5節のホームでのV・ファーレン長崎戦で今季リーグ初スタメンを果たすと、31分に決勝弾を挙げてチームの勝利に貢献した。
そこからスタメンを奪い返し、3試合連続スタメンとなった第7節のアウェー・名古屋グランパス戦。
彼はプロ入りからずっと1つの目標にしてきたことを達成することとなる。
「複数得点はずっと目標にしてきました。やっぱりストライカーは1試合に1点ではチームを助けることができない。個人で2点以上獲るというのは凄く大事なことだと思っているので……。渡邉監督にチャンスをもらってきたのに、それができなかった自分が悔しかった」
「練習でやっていることがゴールに繋がりました」
この試合、2シャドーの一角に入った西村は、0-0で迎えた23分、左サイドからの突破で、シュートまで持ち込む。DFにブロックされたが、そのこぼれ球をFW石原直樹が文字通り身体ごと押し込んだ。
まずはゴールに絡んだ西村は37分、MF蜂須賀孝治がヘッドで落したところへ、走り込みながら右足を強振。今度のボールは誰にも触れることなく、ゴールに突き刺さった。
さらに68分には左サイドでボールを受け、縦に行くと見せかけて、中央へカットインから右足を一閃。念願の1試合2得点を刻むこととなった。
87分にDF大岩一貴が一発退場したことで、西村はここでお役御免となったが、チームは西村のゴールを守りきる形で3-2の勝利を飾った。
「練習でやっていることがゴールに繋がりました」
試合後、彼は笑顔を見せた。1点目のシュート、そして2ゴールはすべて西村らしい、ボールをしっかりとミートした強烈なパンチ力のシュートだった。
「プロの場であまりそういうシュートを出せていなかったのですが、実は今年に入って普段の練習の中でそういうシュートが打てる確率が上がってきていたんです。なので、自分でも『(ゴールは)近づいている』という手応えは正直ありました」