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池江璃花子から“世界のIKEE”へ。
競泳日本選手権で見せた劇的成長。
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2018/04/10 17:00
女子50mバタフライ決勝直後の池江璃花子。自己ベストによる日本新記録で笑顔がこぼれた。
国体での日本記録更新が池江を蘇らせた。
それでも、池江は帰ってきた。
7月の世界水泳選手権が終わったあと、冬場の大事な時期に泳ぎ込めなかったことを反省し、その事実を真摯に受け止め、残っている夏の大会で全力を出すことを誓った。
出口が見えたのは、9月の愛媛国体だった。
台風18号の影響により、2日間にスケジュールが凝縮され、さらに屋外プールだったために雨風の影響も大きかった。そんな悪条件のなかで、池江は50m自由形で24秒33の日本新記録=自己ベストを更新したのだ。
「目標以上のタイムが出たのでビックリです。でも、今シーズンあまり出せていなかった自己ベストを出すことができて良かったです」
そこにいたのは、2カ月前に涙を流した池江でもなく、4月に優勝しても浮かない顔をしていた池江でもなく、リオデジャネイロ五輪代表入りを決めた瞬間に見せた、晴れやかな笑顔の池江璃花子だった。
自己ベストでの4冠という偉業。
2018年に入っても、池江は一度踏んだアクセルを緩めることはなかった。
年が明けてすぐに行われた東京都新春水泳競技大会で、短水路(25mプール)ながら、100mと200mの自由形、50mバタフライ、そして200m個人メドレーの4種目で短水路日本新記録を樹立。さらに、長谷川涼香(東京ドーム/日本大学)とともに挑んだオーストラリアでの武者修行を経て、2月のKONAMI OPEN2018に出場。そこで、200m自由形と50mバタフライで日本記録を更新。特に200m自由形の1分55秒04という記録は、昨年の世界水泳選手権で銀メダルに相当する記録だった。
そして迎えた今回の日本選手権。
初日の100mバタフライ準決勝で日本記録を樹立したことを皮切りに、2日目以降もその勢いは衰えず、結果として50m、100mの自由形とバタフライの4種目すべてで日本新記録を樹立しての4冠を達成した。
リオデジャネイロ五輪以降、モチベーションの置き所で苦しんでいた池江は、ようやく新しいスタートを切った。