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池江璃花子から“世界のIKEE”へ。
競泳日本選手権で見せた劇的成長。
posted2018/04/10 17:00
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph by
Yusuke Nakanishi/AFLO SPORT
泳ぐたびに、日本新記録コールが会場に響き渡る。
夏の国際大会の代表権を懸けた第94回日本選手権水泳競技大会競泳競技。大会が行われた4月3日~8日の6日間で、池江璃花子(ルネサンス亀戸)は6回も日本記録を更新。それらは、すべて池江自身が持っていた記録。つまり、今大会で池江は6回自己ベストを更新したのである。
水泳選手にとっての最大の目標であり、最も難しい「自己ベスト更新」を当たり前のように達成していくその姿はまるで、ミュンヘン五輪で7冠、そしてその7種目すべてで世界新記録を樹立したアメリカのマーク・スピッツを彷彿とさせた。
さらに、その記録1つひとつが、世界のメダル獲得レベルに達している。日本記録を樹立しても、それはあくまで日本レベルだった池江が、世界レベルにまで記録を昇華させたきっかけは、主要大会で自己ベストが出せなかった2017年シーズンにあった。
池江の自己ベスト=日本新記録。
昨年4月、愛知県で行われた第93回日本選手権水泳競技大会。
50m、100m、200m自由形と50m、100mバタフライに出場した池江は、女子選手で史上初となる5冠を達成。前人未踏の記録を達成できたことに笑顔は見せたものの、どこか納得していない表情も浮かべていた。
その理由は記録の内容にあった。
当時5種目(長水路・個人種目)で日本記録を持っていた池江にとって、自己ベスト=日本新記録になるのだが、その自己ベストがひとつも更新できなかったのだ。
池江が以前、口にした言葉がある。
「たくさん試合で泳いで、しんどいときもあるんですけど、自己ベストが出たらそれも吹き飛ぶというか。自己ベストを出せたときが、いちばん楽しいです」