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15歳で五輪、19歳で挫折、そして。
競泳・渡部香生子が2年ぶり代表復帰!
posted2018/04/22 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
4月3日から行なわれた競泳の日本選手権では、ベテランから若手まで、さまざまな選手が目を引く泳ぎを見せた。
その中でも印象的だった1人が渡部香生子だった。
大会最終日の4月8日、200m平泳ぎで2位に入り、派遣標準記録のIIも突破、アジア大会とパンパシフィック選手権日本代表入りを決めた。
「よかったです。久しぶりに、終わった後に『やった』という感じで、すごくうれしかったです」
長期間にわたる危機的な状況を乗り越えてつかんだ切符に、レース後、涙混じりの笑顔で語った。
中学生で頭角を現し、15歳で五輪へ。
渡部は、10代前半から将来を嘱望される存在として注目を集める選手だった。
中学生の頃から頭角を現すと、周囲の期待に応えるように、2012年のロンドン五輪に15歳で出場を果たした。
それから3年、2015年の世界選手権では200m個人メドレーで銀メダル、200m平泳ぎでは金メダルを獲得。規定により、翌年のリオデジャネイロ五輪200m平泳ぎ日本代表に内定した。
ところが、いち早く代表を決めたことが災いした。五輪の金メダル候補として注目はさらに大きくなり、世界選手権金メダリストという肩書きが重くのしかかった。プレッシャーに苛まれ、オリンピックイヤーになっても、練習に集中することができない時期があるほどだった。
結果、個人メドレーでは代表を逃し、迎えたリオ五輪では平泳ぎの100m、200mともに準決勝敗退に終わった。
「何もできませんでした」
渡部は泣いた。