スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
攻めのポゼッションでドイツを翻弄。
史上最高のスペインは無敗でW杯へ。
posted2018/04/06 07:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Getty Images
3月23日に行われたドイツ対スペインの親善試合で、久々に衝撃を受けた。
スペインのパス回しが凄すぎたのだ。
この日は怪我のブスケッツに代わり、チアゴがアンカーで先発。コケとイニエスタがインサイドハーフ、さらにイスコとシルバが偽ウイングとして2列目に入ったのだが、この5人が織りなすパスワークが圧巻だった。
開始6分には、敵陣左サイドのスローインからイニエスタ→ジョルディ・アルバ→イスコ→J・アルバ→イニエスタと目まぐるしくパスをつないで、ドイツのプレス網を無効化。最後はフンメルスの裏に抜け出してイニエスタのスルーパスを引き出したロドリゴが、先制点を流し込んだ。
結局、スペインが奪ったゴールはこの一発だけだったが、その後も、30分過ぎまで圧倒的なボール支配を続けた。
親善試合とはいえ、地元ファンの前で下手な試合はできないドイツはベストメンバーを揃えてきていた。その大男たちがボールに近づくことすらできず、ただただ翻弄されている様は滑稽にすら見えた。
世界王者ドイツを弄ぶように。
グアルディオラ時代のバルセロナは、あまりにも気持ちよくパスを回せるがゆえ、時に本来の目的を忘れてパス回しそのものを楽しんでいるように見えることがあった。
この日のスペインもそうだ。結局試合は1-1のドローに終わったものの、選手たちには圧勝した感覚が残ったことだろう。世界王者ドイツを弄ぶようにボールを動かし続けた前半のプレーレベルはそれほどに高く、強烈なインパクトを与えるものだった。
その4日後。アトレティコ・マドリーのホーム、ワンダ・メトロポリターノで行われたアルゼンチン戦では、サンパオリ監督が率いるロシアW杯の優勝候補にトラウマを残すほどの歴史的なゴールラッシュを実現している。