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17歳CBは予定通りのJ1デビュー!?
名古屋・菅原由勢は何者なのか。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/03/14 17:30
J1でスタメンフル出場を続ける菅原由勢。緊張だけでなく「楽しめました」というコメントも。
「その応援が自分の足を動かしたんだと」
さらにAFC U-16選手権の準々決勝・UAE戦で1-0の勝利を収め、U-17W杯出場権を獲得した直後のミックスゾーンでのこと。
「サポーターも、記者さんも、家族のみなさんも本当にこんな遠いところまで来て下さってありがとうございました。(世界を)決めることができて嬉しいです。これも記者さんだったり、サポーターさんだったり、応援してくれる人のおかげ。その応援が自分の足を動かしたんだと思います」
こんな思いやりに溢れたセリフを屈託のない笑顔で語るものだから……その発言を現場で聞いた人間は、心を揺さぶられないわけにはいかない。
確固たる自分を持ち、さらに他者へのきめ細やかな配慮を忘れない思慮深さまで持つ――これだけをもってしても、やはり年相応とは思えない。
そして、彼の魅力はこれだけではない。大人びたプレー、発言、そして淡々とした表情を見せる一方で、内側にはとてつもなく熱い闘志を滾らせているのだ。
同世代の他の選手に置いて行かれる恐怖。
昨年、名古屋グランパスU-18はプレミアリーグではなく、その1つ下のリーグであるプリンスリーグ東海を戦っていた。このチームは、前年の2016年にプレミアリーグウェストから降格の憂き目にあっていたのだ。
「同年代の他の選手たちがプレミアリーグやJ3でプレーしている中で、自分は凄く置いて行かれている感覚がありました。僕だけ成長が止まっているんじゃないか、もっと高いレベルの試合勘を維持しないとまずいんじゃないのか……と自問自答していましたし、不安と葛藤がありました」
プリンスリーグとプレミアリーグでは、レベルの差は少なからずある。
U-17日本代表のチームメイトである仲間がプレミアで、あるいはセレッソ大阪やFC東京のU-23チームに参加してワンランク上の経験を積んでいる。
彼の中でもむくむくと危機感は募っていただろう。しかし菅原は、ここで自分を見失うような柔な人間ではなかった。
「目指す場所はトップ昇格、さらにその舞台で活躍するということに変わりはないし、それはどんな状況にあっても同じこと。だからこそ、一日一日を大切にして、プレミアやJ3でプレーする選手達よりも意識を高く持って練習に取り組んでいけば、絶対に上手くなると自分に言い聞かせていました。その意識を絶対に落とさないように継続してやってきたんです」
結果、彼はこの1年間で飛躍的に伸びた。