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“喫煙は?”と選手に聞いた就任時。
反町監督と松本山雅の幸福な7年目。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byGetty Images
posted2018/02/24 17:30
その戦術眼で松本に熱狂をもたらす反町監督。今年も群雄割拠のJ2を面白くする存在となる。
ひたむきさが観る者の共感を生む。
さらに反町は「ファウルが目立ち、レッドカードの数に驚かされた。心構えやプレーについても改善していったんだ」とフェアプレーの徹底にも取り組んだ。
なぜ、彼はそこから着手したのか。
「そうした姿勢でサッカーと向き合わなければ、応援なんてしてくれないぞ、と口酸っぱく言い続けた。1人ひとりに自覚を持たせながら、チームのレベルを上げて行かなければいけなかった。最初はそういう面で、いろいろ苦労したよ。1、2年かけてプロの集団になっていけた」
2013、2014、2015、そして2017年と、反町が指揮した過去6年間で、松本はJリーグのフェアプレー賞を4回受賞している。松本が人気クラブであり続ける所以の1つがそこからも見えてくる。ひたむきなプレーが観る者の共感を生む。そして声援が選手を育て、その声援を選手は力に変える。ポジティブな循環ができていった。
「サッカー専用スタジアムがあって、地域リーグの頃からたくさんの人に応援されてきた。松本の街全体に見守られ、チームの規律が整っていったところがある。選手もいろんな人に見られているという意識が働き、1人の人間としても成長している。珍しいクラブだと思う。日本の中で、これから松本のようなチームは出てこないんじゃないか」
反町は目を細める。
J昇格以降、松本を率いたのは反町のみ。
そして迎える2018シーズン、反町は7年目の指揮を執る。それは松本がJリーグに昇格して以来、彼しかこのクラブを率いていないことを意味する。
「それは、やり甲斐があるってことだよ」
単純明快と言える、戦い続ける理由。反町もまた、松本の街から活力をもらい、声援を力に変えてきた1人ということだろう。
2年前はJ1自動昇格圏の2位以内を常にキープしながら、あらゆるチームがなりふり構わずラストスパートを仕掛ける最終盤に星を落として3位に終わり、J1昇格プレーオフ1回戦でファジアーノ岡山に敗れた。
昨季は中盤以降に調子を上げていったが、最終節の京都戦、勝てばプレーオフ進出という状況で敗れ(スコアは0-1)、結局8位に沈んだ。運も少なからずかかわっていたが、紙一重とはいえ、明らかな差に涙をのんできた。