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川口能活と西ヶ谷隆之の清商イズム。
高校時代の先輩後輩が監督と選手に。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/02/20 11:30
川口能活をSC相模原に呼んだ望月重良代表も清水商業の先輩であり、清水商業に入る前からの長い付き合いなのだ。
「ヨシカツはW杯のピッチに立った選手」
そこから先のキャリアは、ほとんど重なり合っていない。'96年に西ヶ谷が名古屋グランパスの一員となってから、対戦相手としてふたりが同じピッチに立ったことはある。
ただ、西ヶ谷が6シーズンで現役を退いたのに対して、川口は五輪代表から日本代表へと登り詰め、4度のW杯に出場してきた。国際Aマッチ出場数は日本歴代3位である。
日本代表経験者が多い清水商サッカー部のOBのなかでも、川口が築いてきたキャリアはとりわけ眩しい。かくも実績豊かな後輩を監督として率いることに、西ヶ谷の気持ちは揺れ動かないのだろうか。選手たちから「ガヤさん」と呼ばれる44歳は、濁りのない笑みを浮かべる。
「選手としてのキャリアは、僕とは比べものにならない。ヨシカツはW杯のピッチに立った選手です。高校の後輩ですけれど、選手としてリスペクトしています。
そもそものところで言えば、高校を卒業してからは別々のキャリアを過ごしてきたので、自分が先輩という意識もそれほど強くない。そうやって聞かれることが多いので、『そう言えばそうだな』と思うぐらいで。だから、やりにくさは全然ないですね」
川口「西ヶ谷さんは幅がある」
川口の胸が波立つこともない。周囲が想像するよりもはるかに、彼らの距離感はシンプルで真っ直ぐである。
「西ヶ谷さんはユース、大学、J1、J2と、色々なカテゴリーで監督やコーチをやってきている。ここから先は僕の想像ですけれど、指導者としても人間としても、すごく幅があるんじゃないかと思うんですね。これからシーズンが開幕して、どんな練習をしていくのか、どんなふうに僕ら選手を引っ張っていくのかが、すごく楽しみですよ」
川口自身のコンディションもいい。
「昨年、一昨年は開幕前の時期にケガをしてしまったのですが、今年は始動からしっかりトレーニングができている。キャンプ中の午前、午後の2部練習にも、何とかついていきましたよ」
「何とか」というのは、かなり遠慮した表現である。プロ入り当時から節制に努めてきた川口は、現在も身体のケアを怠らない。俊敏な身のこなしは、全盛時と変わらないほどだ。