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野球選手のFAは栄転か、求職活動か。
中日に入ったディロン・ジーの場合。
posted2018/01/31 11:20
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
20代の後半、東京からとある地方の田舎町へ引っ越して職探しをした経験がある。
すでにバブルがはじけた後だったので景気のいい時代ではなかったが、「仕事ぐらいすぐに見つかるだろう」とタカを括っていた。「選んでいるわけではないし、その内、見つかるやろ」という考えが甘かった。
職業安定所に通いながら腰かけ程度に幾つかバイトみたいなことをして、定職に就いたのは転居してから1年以上もあとだった。もっと真面目に仕事探しをしていれば良かった、と後から思った。後悔先に立たず、というやつだ。
元メッツのディロン・ジーという31歳の投手が、中日ドラゴンズに移籍した。先に入団テストが決まっていた松坂大輔投手とは元チームメイトで、当時のジーは2けた勝利を2度達成し、開幕投手を務めるなどした先発投手陣の柱だった。
中日のオファーを見送るのが怖かった。
過去2年は故障や不調のために3球団で計51試合に登板し、先発18試合と限られたチャンスしか与えられなかった。中日入団が決まった翌日、ジーはMLBネットワークにネット出演。こう話している。
「自分がスター選手じゃないのは分かっているし、このスローな展開のFA市場の中で、新しいチームを見つけるのが簡単じゃない数あるフリーエージェント(FA)の内の1人だということも分かっていたから、(中日の話が来た時に)見送るのが怖かった」
そういう選手は多いのではないか。
とくに今オフのようにFA市場の展開が極端に遅い時は、高給取りのプロ野球選手でさえも不安になるだろう。ここで言うFA選手とは、ダルビッシュ有やジェイク・アリエッタ、J・D・マルティネスといった「複数年契約で総額1億ドル以上の契約が確実」と言われているような選手のことではない。
契約が満了したお陰でルール上、FAになってしまった選手たちのことである。