F1ピットストップBACK NUMBER
ホンダの再出発に求められること。
トロロッソと共に基本に忠実に……。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2018/01/28 08:00
今季のトロロッソのドライバーはピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーという、フル参戦は初めて同士のコンビとなる。
6年間のブランクは初心者に戻るに十分な空白。
F1の戦いはよく、山登りに例えられる。'15年にF1に復帰したホンダは当初、他メーカーとは異なった独特のパワーユニットを製作し、ライバルたちとは異なるルートで山頂を目指した。ところが、その道は想像以上に険しく、2年で断念。
3年目の昨年は王者メルセデスと同じルートを選択したが、登り慣れたメルセデスのスピードにいきなり付いていこうとして、何度も足を滑らせてしまい、滑落しながら登っていたといってもいい1年だった。
つまりこれまでのホンダの戦いぶりを見ていると、初心者がいきなり世界最高峰の山を目指していたようなもの。どんなルートを選択しても、登頂できないのは自明の理だった。
かつてF1界で頂点を極めたホンダを初心者呼ばわりするなんて、失礼ではないかと思われるかもしれない。しかし、日進月歩で技術が進化し続けているF1の世界で6年間のブランクは、初心者に戻るに十分な空白なのである。かつてホンダが登頂した山は、いまはさらに高くそびえ立っていたのである。
今年はあえて頂点を目指さずに足腰を鍛えては?
じつはホンダが'15年に復帰する際、パートナーを組むマクラーレンから注意されていたことがある。それは「7年前のF1とはまったく違うから、気をつけろ」だった。だが、ハイブリッドシステムは市販車で経験しているという自負があったホンダは、その言葉を甘く見てしまった。
その言葉の意味を知ったとき、パートナーは去って行ってしまった。麓に残されたホンダを待っていたのは、まだ頂点に立ったことがないトロロッソだった。しかも、ホンダも昨年末にリーダーが交代した。
ならば、今年はあえて頂点を目指さずに、新たなパートナーと山登りの練習に時間を割いてみてはどうか。無理のない登山計画を立て、装備を見直し、まずはしっかりと足腰を鍛えるというわけだ。