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セナが愛したマクラーレンの名車。
競売でロン・デニスが買い戻す!?
posted2018/02/12 09:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Marlboro
アイルトン・セナが1993年にモナコGPで勝利したマクラーレンのマシン「MP4/8」が、5月にオークションにかけられることになった。
F1が文化となっているヨーロッパでは、F1マシンに高い資産的価値があり、オークションは頻繁に実施されている。昨年11月には、ミハエル・シューマッハーがモナコGPで最後に優勝したマシン「フェラーリF2001」が出品されている。
今回出品されたMP4/8にも、さまざまな歴史的価値がある。ひとつは、セナが最後にモナコGPで優勝を飾ったマシンだということだ。「モナコでの1勝は3勝分の価値がある」と言われる。モナコGPで複数の勝利を挙げているドライバーは「モナコ・マイスター」と称されるほどだ。そのモナコで歴代最多となる通算6勝を挙げたのがセナだった。
もうひとつの価値は、このマシンはセナがドライブした最後のマクラーレン車の1台だったこと。3度のチャンピオンに輝き、通算41勝を挙げた稀代の天才セナ。そのうち35勝はマクラーレン在籍中に勝ち取ったもの。セナは'94年にウイリアムズに移籍するが、1勝もできないまま悲運の死を遂げた。
「セナといえば、マクラーレン」
このイメージが強いのは、そのためだ。
マクラーレン最後のシーズンとなった'93年の愛車。
MP4/8は、マクラーレンで最後のシーズンを戦った'93年の愛車だった。この年のマクラーレンは前年までパートナーだったホンダがF1活動を休止したため、非力なフォード・エンジンを搭載して戦わなければならなかった。
アクティブ・サスペンションというハイテクな車高調整機能を搭載したウイリアムズ・ルノーに対して、'92年に3勝にとどまったマクラーレンとセナが、ホンダを失った'93年にどのような戦いを披露したかに注目が集まった。
周囲が苦戦を予想する中、セナは5勝を挙げたのである。その中には、オープニングラップで4台をごぼう抜きして逆転優勝した第3戦ドニントン・パークでのヨーロッパGPも含まれていた。