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監督は車イス、コーチはカメラマン。
ブリオベッカ浦安、“J5”の挑戦劇。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKei Totsuka
posted2018/01/28 11:30
ブリオベッカ浦安の練習試合の1コマ。車イスでの指導姿は見慣れないが、指導者の力はそんな部分では問われない。
地域の人が「また見たい」と思うサッカーを。
'18年シーズンはゼネラルマネージャーとしてチームの強化に携わる齋藤が、引き締まった表情を浮かべた。
「今年はまた浦安へ戻って試合ができます。そのときに、地域の人たちが『またこのサッカーを見たいな』とか『次の試合でも応援したいな』と感じてくれて、育成組織の子どもたちに『自分もこのサッカーがしたいな』と思ってもらえるようなチームを、羽中田監督なら作ってくれるのではないかと。見ている人たちの脳裏に焼き付いて、またスタジアムへ足を運ばせるようなサッカーを」
10チームが2回戦総当たりで争う関東リーグは、J1を頂点とするカテゴリーで言えば“J5”に相当する。大学生のチームも混在するリーグだが、ここ数年は競争力が高まっている。
昨シーズン優勝のVONDS市原FC、同3位の東京ユナイテッド、ブリオベッカ浦安とともにJFLから降格した栃木ウーヴァFCらは、元Jリーガーやプロ契約選手を増やして戦力アップをはかっている。昨年まで羽中田が率いた東京23FCも、優勝争いに加わってくると予想される。
ほとんどの選手は仕事との兼業。
一方のブリオベッカ浦安は、ほとんどの選手が仕事を持ちながらサッカーに取り組んでいる。東京ユナイテッドの元日本代表DF岩政大樹のような、サッカーファンに広く知られた選手もいない。
ライバルは多い。ハードルは高い。それでも、羽中田は濁りのない笑みを浮かべる。
「難しい仕事のほうが、やり甲斐があるじゃないですか。選手たちがピッチ上で輝けるようなサッカーを、スタッフも含めてみんなで作っていきたい。都並さんもどんどん意見をしてくれるので、それもすごくありがたいんですよ」
ブリオベッカ浦安のスタッフには、テクニカルディレクターとして都並敏史が名を連ねている。
ふたりの出会いは、40年近く前までさかのぼる。18歳の都並が招集された日本ユース代表候補の合宿に、高校進学を控えた中学3年の羽中田が特別に参加した。戸惑いを抱えながら懸命についていく15歳を、何かと気にかけたのが都並だったのである。