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監督は車イス、コーチはカメラマン。
ブリオベッカ浦安、“J5”の挑戦劇。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKei Totsuka
posted2018/01/28 11:30
ブリオベッカ浦安の練習試合の1コマ。車イスでの指導姿は見慣れないが、指導者の力はそんな部分では問われない。
「やりたいサッカーの根本はバルサ」という共通点。
鈴井が携わってきたチームのサッカーを、羽中田は一度も観たことがなかった。それでも、コーチを依頼することにためらいはなかった。
「バルセロナで僕が見たもの、味わったものを、彼なら理解してくれるんじゃないかと思ったんです。指導者として仕事をしているところは見ていないけれど、久しぶりに会って話をしてもお互いに共感できていた。僕がやりたいサッカーの根本にあるのはバルサで、それは彼も同じですから」
53歳の羽中田の思いを、46歳の鈴井は両手で大切に受け取る。
「羽中田さんがやりたいものは、僕のやりたいもの。迷うことなくコーチをやらせてもらいました」
ブリオベッカが、敵だった羽中田に感嘆。
羽中田が標榜するサッカーは、チームが目ざす方向性とも重なり合う。
2015年の関東リーグ1部で、羽中田が指揮していた東京23FCはブリオベッカ浦安と対戦している。結果は浦安の1勝1分けに終わったが、勝利チームの監督だった齋藤芳行は複雑な気持ちを抱いた。
「内容的には2試合とも我々の完敗でした。目ざすサッカーにこれだけこだわっているのか、という印象を強く受けました。リーグ戦で結果を出していかないといけないけれど、羽中田監督のもとでなら過程を大事にできると思ったんです」
JFLで戦った'16年と'17年シーズンのブリオベッカ浦安は、千葉市、柏市、習志野市などでホームゲームを開催した。JFLの試合は天然芝のスタジアムで開催することになっているが、彼らの主戦場は人工芝だったからである。
しかし、ホームタウンから離れることで、観客動員は苦戦を強いられた。関東リーグからのリスタートとなる'18年シーズンは、浦安市のスタジアムに観客を呼び戻すことも大切なミッションだ。