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錦織圭に憧れた韓国のチョン・ヒョン。
全豪で一躍スターになるまでの道のり。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAP/AFLO
posted2018/01/25 17:00
敗れたジョコビッチから祝福を受けるチョン。試合後、ジョコビッチがチョンを絶賛するコメントを出すほどの強さだった。
体格面で共通のハンデを背負っているという親近感。
特にスポーツにおいて〈アジア〉というグループは、国の枠を超えて刺激し合うことが多いように感じる。
顔が似ているという親近感もあるが、体格面で共通のハンデを背負っているからだろう。世界の共通語である英語とまったく異なる言語体系を持っているということで、そのストレスを分かり合えるところも大きい。
178cmの錦織が見せた快挙の数々は、日本の子供たちに夢と手本を与えたばかりでなく、近隣アジアの国の若者たちをも刺激していたのだ。そして、そういったアジア選手の活躍は前々から錦織も期待していたことだ。記者会見での言葉やふるまいの中にそれを汲み取れる機会は少なくなかった。
錦織は、海外の記者との英語でのやり取りは比較的単調になりがちでも、韓国や中国の若い記者が尋ねる質問には、自分の考えを明確にしながらとても丁寧に答えていた印象がある。
アジアの選手たちを激励するようなコメントを。
たとえば2年前のウィンブルドン。
韓国のテニス専門誌の若い女性記者が尋ねた「アジア人にとってテニスは難しい競技だと言われています。その中で唯一成功しているあなたはどう考えますか」という質問に、錦織はこう答えている。
「アジアの選手は、まずは体を強くしないといけないと思います。そのために、ジムでたくさんのトレーニングをすることが必要です。でないと、パワフルで大きい選手と戦い続ける中で、僕のようにたくさんのケガをしてしまう。
あと、精神的にも本当に強くなり、自分を信じないとダメですよね。それは体格的に劣る多くのアジアの選手にとってとても難しいことです。でも自分を信じてがんばれば、僕のように、誰だってトップ10になれる」
錦織が、まるでその記者を通じてアジアの若い選手たちを激励するように語ったのは、自分自身も13歳でアメリカに渡ったとはいえ、日本の先輩プレーヤーのみならずアジアの選手から影響を受けてきたからだ。