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サントリーに今も流れるエディー流。
データ、ハードワーク、知的な体力。
text by
永田洋光Hiromitsu Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/01/26 11:00
2年連続の日本一に輝いた沢木敬介監督。エディー流ともまた違うフィットネスへのこだわりが成功の基礎にある。
サントリーは最後まで相手を封じるべく走り続けた。
そして、決勝戦。
サントリーは、パナソニックのチャンスの芽を前半から全力で摘み取りにかかった。
たとえば、24分。
パナソニックはSOベリック・バーンズの負傷で途中からピッチに入った山沢拓也が、素晴らしいランでサントリー防御を破り、パスを受けた山田がゴール前へとキック。いつものトライパターンに持ち込んだ。
しかしサントリーは、今季トップリーグMVPに選ばれたFB松島幸太朗が超人的なスピードで戻ってボールを拾い上げ、ピンチを防ぐ。
34分には、山沢が小さなキックで福岡を走らせたが、この場面は流がものすごいスピードでボールに向かって駆け戻り、福岡を走らせなかった。これもパナソニックのトライパターンだったが、サントリーはすべてを織り込んだように対応してピンチの芽を摘んだ。
徹底的なゲーム分析で対策を立て、相手の得意パターンに持ち込ませなかった――と言えばその通りだが、ほとんどのトップリーグのチームは、対策を徹底してもパナソニックのゲームスピードについていけず、トライを奪われるのが常だった。
しかしサントリーは、全員が、最後まで相手を封じるべく走り続けた。この高いフィットネスが、4点差の勝負を分けた最大の要因だった。
沢木監督がエディーから吸収したノウハウ。
試合後の記者会見で、流キャプテンはこう胸を張った。
「苦しい状況も多く、どちらに転ぶかわからない試合だったが、僕らは練習量に自信を持ち、フィットネスにも自信を持っていて、最後まで走り切れた。その差が少し出たのかなと思う」
背景にあるのは、GPSを活用したデータ管理に基づく、厳しいトレーニングだ。
選手たちが練習や試合で、どのくらいの距離をどのくらいのスピードで走り、時間の経過とともにスピードや距離がどのくらい低下するか――それらがすべてGPSを通じて数値化され、データとして蓄積される。
これは、エディー・ジョーンズがヘッドコーチ(HC)だった時代の日本代表で活用され、現在ではトップレベルのチームで当たり前のように導入されている方法だが、サントリーの沢木敬介監督も、'15年W杯終了まで代表にコーチング・コーディネーターとして帯同し、ノウハウを吸収した。
昨年の日本選手権終了後には単身で渡英し“元上司”が率いるイングランド代表に帯同して最新情報を収集。自身のコーチングもアップデートした。