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サントリーに今も流れるエディー流。
データ、ハードワーク、知的な体力。
posted2018/01/26 11:00
text by
永田洋光Hiromitsu Nagata
photograph by
Kyodo News
「ゲームスピードを上げる」という言葉がある。
ラグビーにおいて、攻守の切り替えを瞬時に行い、相手を休ませずにボールを動かし続けて試合のテンポを上げることを指す。
第55回日本選手権決勝を戦ったサントリーサンゴリアスとパナソニックワイルドナイツは、タイプは違うが、ゲームスピードを上げることにかけては日本で突出したチーム。
8月から12月のレギュラーシーズンでは、パナソニックは13戦全勝。サントリーもパナソニックに敗れただけの12勝1敗だった。両チームの実力は、明らかに頭1つ抜けていた。
そして、すぐにはがれる秩父宮ラグビー場の芝生を除いて、最高のコンディションで両者が再激突。今季の最高峰に位置づけられるレベルの高さを見せつけた。
結果は12-8。
サントリーが、胃の痛むようなクロスゲームを制して、2年連続で頂点に立った。
個のパナソニック、組織のサントリー。
両チームを比較すると、興味深い構図が見える。
パナソニックは、FLデービッド・ポーコック、同じポジションの布巻峻介キャプテンといった名うてのボールハンターが、相手が持ち込んだボールを瞬時に奪いとり、それを福岡堅樹、山田章仁の両スピードランナーが自陣深くからでも俊足を飛ばしてチャンスに結びつける。
つまり、ボールを持ってからあまり密集を作らず、時間をかけずにトライを奪う。
サントリーも時間をかけずにトライを奪えるチームではあるが、考え方は若干異なる。
こちらは圧倒的なフィットネスでボールを動かし続けてスペースを作り出し、キャプテンでSHを務める流大のボールさばきに合わせて、放られたパスに複数の選手が走り込む。結果、防御は的を絞れずに、次々と大きなゲインを許す。パナソニックよりも密集の数が多くなるのが特徴的だ。
言葉を換えれば、パナソニックは突出した個人の力でスペースを切り拓き、そこから各自の嗅覚でスペースに走り込んでチャンスをものにするが、サントリーは組織で防御を崩してスペースを作り出す。
もちろん、パナソニックがフェイズを重ねてトライを奪うことは当然あるし、サントリーが個人技を起点にカウンターアタックから手間暇かけずにトライを奪うこともある。ただ、そういう特徴的な傾向が両チームには色濃く見られるのだ。