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内川聖一は当代最高の右打者である。
あまりにも圧倒的な3つの数字。 

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNaoya Sanuki

posted2018/01/10 11:30

内川聖一は当代最高の右打者である。あまりにも圧倒的な3つの数字。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

内川聖一は歴史に残る名打者である。彼が一線級であるうちに、その名人芸を目に焼き付けておきたい。

21世紀最高のアベレージヒッターの勲章。

 しかも内川はシーズン打率で凄い記録を作っている。

<右打者のシーズン打率ランキング>

1.内川聖一 (横浜) .378(2008年500打数189安打)
2.ローズ (横浜) .369(1999年521打数192安打)
3.落合博満 (ロッテ) .367(1985年460打数169安打)
4.広瀬叔功 (南海) .366(1964年456打数167安打)
5.藤村富美男 (阪神) .362(1950年527打数191安打)

 今からちょうど10年前の2008年、内川は初めて規定打席に達し、2位青木宣親(ヤクルト .347)にぶっちぎりの差をつけて首位打者に輝いた。鮮烈なデビューだったが、これは内川の入団と入れ替わりに横浜ベイスターズを去ったロバート・ローズが1999年に記録した.369を抜く、右打者の最高打率だ(全体では7位)。

 左打者を含めても、21世紀以降、内川のこの打率を抜いた打者はいない。内川はまさに「21世紀最高のアベレージヒッター」と言ってよいのだ。

2.内川は両リーグを制覇した稀有な打者である。

 内川聖一は、大分県立大分工業高校出身。甲子園には出ていないが、打撃センスは早くから注目され、2000年のドラフト1巡目で横浜に入団。当初は金城龍彦、多村仁、小池正晃らの陰に隠れていたが、2005年頃から頭角を現し、2008年の首位打者を皮切りに、リーグ屈指の好打者として売り出した。

 2008年から3年連続で3割をマークし、2010年オフにFA宣言をしてソフトバンクホークスに。

 セの球団からパの球団へFA移籍した強打者には、1993年の松永浩美(阪神→ダイエー)、2004年の稲葉篤紀(ヤクルト→日本ハム)、2006年の小久保裕紀(巨人→ソフトバンク)、2008年の中村紀洋(中日→楽天)などの先例があるが、いずれも「訳アリ」だった。

 バリバリの働き盛りの主力打者で、純粋にパの球団を選んだのは内川が初めてだ。当時、このニュースを聞いてパ・リーグファンは歓喜したものだ。

 内川はソフトバンクに移籍した2011年に.338(429打数145安打)で2度目の首位打者を獲得。セ・パ両リーグでの首位打者獲得は、江藤愼一('64、'65年中日、'71年ロッテで首位打者)以来の快挙だった。

【次ページ】 横浜であと55安打していれば夢の……。

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