オリンピックへの道BACK NUMBER
坂本花織と樋口新葉はまだ高校2年。
平昌代表、運命の分かれ道について。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2017/12/26 08:00
今季、誰にも負けない大会数をこなし、急成長し、ついに五輪代表の座まで辿り着いた坂本。大会までの短期間に、さらなる成長を期待したい。
樋口はシーズンベストで世界3位の点数を出していた。
対照的に、樋口はショート、フリーそれぞれでジャンプにミスが出た。ショートでは冒頭のダブルアクセルが1回転半となる。
「力が入りすぎました」
樋口は原因を語っている。
フリーでは、3サルコウが2回転となった。前日の公式練習で右足を痛め、痛み止めを飲んで迎えていた。
結果、206.96で年齢制限から五輪出場資格のない紀平梨花に次ぐ4位で終えた。
ただ、フィギュアスケートの代表選考は全日本選手権のみで決めるわけではない。他に、GPファイナル上位2名、世界ランク上位3名、シーズンランク上位3名、シーズンベスト上位3名、と項目があり、それらを踏まえて総合的に判断される。
樋口はすべての項目に名前を連ねるのに対し坂本は2つ。その2項目でも樋口が坂本の上を行く。
特にシーズンベストでは、海外勢を合わせても、メドベデワ、ザギトワに次ぐ3位という得点を出している。こうした点を踏まえれば、樋口が優位とも捉えられる。
選考理由は「全日本の成績とパフォーマンスです」。
どちらにも代表となっておかしくはない根拠があった。
事実、選考会議では「議論が白熱した」と小林芳子強化部長は明かしているのだ。
そして選考の理由を、「あえて言うなら」と前置きした上で、「全日本の成績とパフォーマンスです。ジャンプにGOEのプラスがつきますし、ショート1位、フリーと合わせて2位になったのは大きいです」と説明した。
いくら実力を秘めていても、ここ一番で発揮できなければ意味はない。五輪代表をかけた、緊張を強いられる試合でそれに打ち勝ったことが、最終的には決め手となったのである。