“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高3でJリーガーになるという決断。
中村敬斗「20歳で海外は若くない」
posted2017/12/22 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
タイムアップのホイッスルが響いた瞬間、中村敬斗はその場に立ち止まり、腰に手を当ててまっすぐに前を見つめていた。
12月17日のプレミアリーグ参入戦・三菱養和SCユースvs.富山第一。三菱養和のエース中村敬斗は最前線で何度も仕掛けたが、富山第一の激しいマークの前にゴールを決められないまま、1-4の完敗を味わった。
中村は今、高校2年生である。普通に考えれば“来年こそ”となるのだが、彼はこの試合を「高校ラストゲーム」と位置づけて臨んだ。
なぜなら彼は「高3でプロになる」という決断を下したからだ。
中村は2016年から1年生ストライカーとして注目を集めていた。プリンスリーグ関東ではゴールを量産すると、AFC U-16選手権にも出場してスカウトの動きも激しくなった。そして2017年初めにはガンバ大阪、FC東京、ジェフユナイテッド市原・千葉の練習に参加し、これらクラブ以外にも獲得に向けて水面下で動いていたチームもあった。
「“若い”という言葉に甘えている時ではない」
環境が変化する中で、彼の中には一貫した将来像があった。
「プロとして海外でプレーをする。これは自分の中で重要なことなんです」
その目標を達成するためには、人よりも早く経験を積んで、そのステージに早く辿り着かないといけない。当時16歳の彼はすでに“年齢”を気にし始めていたのだ。
「世界だと17、18歳でトップレベルのリーグでプレーして、19、20歳で代表に入ったり、ビッグクラブに入団している。もう“若い”という言葉に甘えている時ではないんです。だからこそ、僕はより早くレベルの高い場所で経験を積みたい」
中村のプロ志向の強さを感じさせる言葉は、これ以外にもある。
「最初にJクラブの練習に参加した時、あまりのスピードの速さと巧さに衝撃を受けたんです。でも2日目以降は徐々に慣れてきた。そこから練習参加するたびに、刺激や得るものが凄く多くて“こういう高いレベルでやれば、もっと成長できる”と確信が持てたんです」
自分の考え方は間違いないと感じるとともに、こんな想いも強くなっていた。
「チームをプレミアに上げてからプロに行く。それが自分の責任」