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一度は引退を考えた空手女王・植草歩。
全日本3連覇から東京五輪目指す!
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byItaru Chiba/AFLO
posted2017/12/08 16:00
今秋、ドイツで開催されていた大会での植草。海外でも競技者・観戦者が多いのが空手の魅力のひとつである。
技術への自信が、さらに精神面を成長させた。
精神面の成長も見逃せない。
昨年までの植草は「勝たなきゃいけない」という強迫観念にとらわれることが常だった。しかし、いまは違う。「この対戦相手に対して何をやったらポイントをとれるのか」と冷静に考えられるようになった。
なぜ思考の変化は起こったのか。
「メディアにも取り上げてもらうようになって連勝も続いていたので、その波に乗りたいという気持ちが大きかった。そうなったら勝ちに対する変なこだわりがなくなりました。試合直前に相手のアップを見ていたら『蹴りを食らったらどうしよう』というネガティブな気持ちも出てくるけど、いざ向き合ったら、『この技でとればいい』という自分がいる」
開き直ることができるようになった?
「いや、技術としての確信があります」
「準備と戦略があるからこそ、勝てるんです」
植草の得意技は中段突きだが、世界王者となってマークがきつくなってきた現在、最初から十八番で決めようとは思っていない。
「中段突きだけやってもとれないので、その前に上段の技を見せたりすることで中段突きが一層活きる。決められる時に決めたらいい。準備と戦略があるから、こそ勝てるんです」
オリンピック種目として採用された空手は伝統派。いわゆる「寸止め」だが、実際には全く当たらないというわけではなく、ライトコンタクトになるケースも多い。
「ただ、貫通させたらいけない。審判に対する見せ方も大事です。届いていなくても、うまく見せればポイントになる」