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一度は引退を考えた空手女王・植草歩。
全日本3連覇から東京五輪目指す!
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byItaru Chiba/AFLO
posted2017/12/08 16:00
今秋、ドイツで開催されていた大会での植草。海外でも競技者・観戦者が多いのが空手の魅力のひとつである。
「え~っ、私はもうやらないですよ」
決起集会というべき会見に呼び出された植草は、登壇前関係者に耳打ちされた。
「植草さん、続けると言ってくださいね」
「え~っ、私はもうやらないですよ」
「いや、オリンピックの舞台で夢を叶えたいと言ってください」
その一言で背中を押された植草は引退の二文字を押しとどめ、記者団に東京への夢をアピールした。翌日のスポーツ紙を見たら、自分の発言が大きく掲載されていた。
「まわりはみんな私が辞めると思っていたと思うけど、その時現役を続けざるをえないと思いました」
「東京までモチベーションを保てるかどうか……」
その一方で、不安もあった。2020年、植草は28歳になっている。年齢的に金メダルを狙うのはギリギリのラインだと思ったので、トレーナーに悩みを打ち明けた。
「東京までモチベーションを保てるかどうかわかりません」
「いや、君は肉体をほとんど鍛えていないし、足りない部分がいっぱいある。のびしろだらけなのに諦めるのはもったいないよ」
そうなのか――やる気になった植草はフィジカルのみならず、栄養士やメンタルトレーナーもつけて東京を目指すことになった。
「2020年までの自分のビジョンを考えた時、長いようで短いと実感することができた。それが続けようという決心につながりました」
フィジカル面では上半身の強化に重点を置く。それまでの植草は上半身が弱く、腕立て伏せが10回もできなかったからだ。
「フィジカルトレは下半身ベースにやっていたけど、上半身も鍛えてバランスのいい身体にしたかった。数値的には全然トップアスリートではないといわれています(苦笑)。連戦が続くので、ケガのない身体にもしなければならない」