野球のぼせもんBACK NUMBER
年俸大幅増も上林誠知は笑わない。
イチローと内川聖一から学ぶこと。
posted2017/12/06 11:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
年俸が今季の800万円から、来季は3500万円に跳ね上がった。4倍超もアップしたのだから“ホクホク顔”でもいいはずだ。しかし、12月1日午後に契約更改を終えて記者会見場に現れた上林誠知は、複雑な表情を浮かべたままだった。
「金額に不満なんてありません。むしろ、申し訳ないです。こんなに(年俸を)上げてもらって。あんまりいい結果を残していないのに……」
'17年シーズンを「上林、飛躍の1年」と評して、文句をつける人はまずいないはずだ。134試合に出場し規定打席数をクリアした。
打率.260、13本塁打、51打点、12盗塁。
「これまでセンターを守ることが多かったので不慣れだった」という、ライトのポジションでも好守で何度もチームを救った。ゴールデングラブ賞のパ・リーグ外野手部門は“次点”の4位。惜しくも受賞は逃したが、失策は一度もなく守備率10割を達成。加えて補殺、いわゆる強肩から放たれるレーザービームは、リーグ1位の10を記録して球場を沸かせた。ファンも新星の登場を大歓迎し、7月のオールスターゲームにはファン投票で初出場を果たした。
イチローから影響を受け、野球に笑顔はいらない。
しかし後半の失速もまた、誰が見ても明らかだった。
5月には月間打率.355をマークしたが、7月と9月はいずれも1割台と不調に終わった。
「一番納得できないのはやっぱり打率です。こだわっていきたい部分なので」
上林は、感情の起伏を表に出さない。打撃の調子を尋ねて「まあまあですね」とボソッと返ってくる時ほど調子がいいというタイプである。
野球に笑顔はいらない。それが持論だ。
「それについては、イチローさんに完全に影響を受けていますね。野球を始めた小学生の頃からイチローさんが僕の憧れでした。いや、今でも憧れています」