炎の一筆入魂BACK NUMBER
鈴木誠也、ケガ離脱後の大変身!?
練習場に響く異様な打撃音が……。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/11/20 07:00
優勝セレモニー時の鈴木。完全復帰には1年以上かかると言われていたが、回復具合が良く、ファンにも早く笑顔が見せられそう。
「お前はこれだけ離脱しなければ、変われない」と。
「これまでも肉離れなどのケガをしてきた。そのたびに体のケアの不十分さを突き付けられたような感覚だった。昨年のケガ(2月の右太もも裏肉離れ)もまだまだ足りないと言われたようなものだった。だからその時は、生活面から食事面も全部改善した。
そうしたら今度は筋肉系ではないケガだった。しかもこれだけ離脱するのは初めての経験。それは精神的な弱さであり、『これだけの時間がないと、お前はこれだけ離脱しなければ、変われないんだよ』と言われているのだと捉えています」
胸に刻んだのは野球人としての変化以上に、人間としての変化だった。
「自分でもこのまままではいけないと分かってはいた」
広島のレギュラーとなり、WBC日本代表にも選出された。周囲の期待が高まり、注目度も一気に増した。過熱する一方の報道の渦中で、自らの理想像に対して焦り、時折、その周囲に対して鋭利さを放つこともあった。
それは一流、超一流への階段を上がる過程にある必然のようにも感じられた。だが、鈴木は当時からジレンマに襲われていたのだという。
「自分に対してもそうだし、周囲に必要以上に過敏になっていた。自分でもこのままではいけないと分かってはいたんです。でも、その時は変われなかった……」
成績が上がり、チーム内での立場が変わっても、自分自身への物足りなさは増す一方だったという。そんな自分の思いと対照的に、ますます注目度が上がる周囲の変化に追いつけない自分がいた。
ただ、シーズン中であれば次から次へ試合が訪れる。
チームの勝利のために目の前の打席にすべてを注がなければいけない。全神経を集中させてきたつもりだが、今思えば今季はわずかに精神的な浮き沈みがあったと自省する。