猛牛のささやきBACK NUMBER
今も右目の横には傷跡が……。
オリ・小林慶祐が目指す復活の道。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/11/15 10:30
小林慶祐は社会人を経由してプロ入りした1年目から35登板し、プロでの居場所を見つけた。
一塁側に傾くフォームはどうなる?
ただ、気持ちは切り替えようとしていても、体は覚えているのかもしれない。ボールを放したあとの小林のしぐさを見てふとそう感じた。小林はもともとフォームに躍動感がある分、投げたあと一塁側に体が傾く癖があったが、10月24日の登板では、体が傾きかけた瞬間、急いでバッと打者の方に体を向ける反応が見られた。
「別に自分自身、ボールが当たったから怖いとか、恐怖心を持っているつもりはないんですけど、もしかしたら体が勝手に反応しているのかもしれません」
打球が顔に当たったのは、体が一塁側に傾いていた時だった。
しかしだからといって、アクシデントのあと投げ方を変えることはしなかった。
「(一塁側に傾くのを)なくしてしまうと、自分のよさがなくなるので。そこを変える気はないです」
小松聖二軍投手コーチもこう語った。
「(フォームを変えて)パワーの伝え方を変えるとなると、パフォーマンスが落ちる可能性もある。投手は9人目の野手ですから、反応はできるようにしたほうがいいとは思うんですけど、強制的にそうさせるのはどうかなというのがある。フォーム自体をあまり変えてしまうと、あいつが死んでしまうから……。どこかで吹っ切れる部分はあると思うんですけどね」
2度目の先発では7回無失点と適応力を見せる。
そんな中で小林は着実に前に進んでいる。6日後の10月30日、小林は2度目の先発のマウンドに上がり、7回5安打無失点の好投を見せた。小松コーチはこう評価する。
「テンポもよかったし、カウントを進められるボールもたくさん持っているし、三振も取れる。前回は立ち上がりが悪かったけど、力の抜きどころ入れどころや技術的なところを、考えてちゃんと修正していた。すごく適応能力がありますね。そういう能力がたぶんチームを助けてくれると思います。
先発かリリーフかまだわかりませんが、長いイニングも投げられるということは、彼にとってもチームにとってもプラスじゃないでしょうか」
怪我によるピンチから一転、来季に向けチャンスを大きく広げてみせた。