ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
賞金王争いは夫婦vs.会長vs.連覇。
バラエティー豊富な3人の珍記録。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2017/11/01 07:00
今季1勝ながら高水準のプレーを見せている小平。宮里と池田との激しいつばぜり合いで、シーズン終盤戦も盛り上げる。
“職人気質”なセッティングを切り替えて。
宮里は連戦の合間に理事会に出席したり、スポンサーを訪問したり、愛娘を塾に送ったり、長男の幼稚園の運動会で大玉を転がしてみたり……と、まあいろいろ大変である。小学3年生の長女・莢杏さんは近年、いよいよゴルフを始めたそうで、一緒に練習場に向かうこともある。ちなみに、彼女の叔母さんに対する目線は世間のそれとは少々違う。ここ最近まで「へえ、藍ちゃんもゴルフをやるんだね」という感じなのだから、驚きだ。
小平と同じく、初の栄冠がかかる宮里は、その道すがら進化を求めて新しいチャレンジにも取り組んでいる。この秋、アイアンセットをごっそり替えた。
これまでは弾道を操りやすい、ヘッドの小さなモデルを好んできたが、この秋に見た目も大きいキャビティタイプにスイッチ。ボールを曲げやすいクラブは、芯を外せば勝手に曲がるリスクがある。それを排除してミスに許容性のあるモデルにした。
きっかけは今季前半戦でスポット参戦した海外メジャーでのこと。世界のトップ選手のキャディバッグをのぞき見ると、どうも自分の“職人気質”なセッティングが気になった。あらゆるタイプのコースを攻略するにあたり、男子ツアーでもいまや「まっすぐ、遠くに飛ばして攻める」のが最高峰のトレンド。「全然調子はよくないけれど、ミスをしても、なんとかグリーンにボールが食いついている」というのがこの秋の自己評価。やさしいクラブで、厳しい第4コーナーを回ってからの戦いに入る。
片山以来となる2年連続賞金王を目指す池田。
さて、最後の池田は今年、片山晋呉以来(2004~06年)となる「2年連続賞金王」の称号を目指すことのできるただ1人の選手だ。これを達成したのは過去、1973年に現行のツアー制度が施行されてから、AONと片山だけ。
小平、宮里と大きく違うのが、池田はシーズン前半戦を主に海外でプレーしたことにある。前年末および、4月上旬の世界ランキング50位以内等の資格を使い、世界選手権シリーズ、PGAツアー、全4大メジャーに出場。8月中旬までの日本ツアー出場は5試合だけ。転戦を終えて日本に帰ってきた8月下旬以降に3勝を挙げ、一気にレースに加わった。
ただ勇んで臨んだ米国での戦いは、悔しさばかりが募った。メジャーはすべて予選落ち。シーズンベストの22位だった5月のザ・プレーヤーズ選手権も最終日に74をたたいて、「自分を許せない」と涙を流した。