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武豊、最内強襲を選んだ英断と信頼。
キタサンが最速の末脚で天皇賞制覇。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/10/30 11:30
3コーナーの仕掛け、内で待つ判断、直線のコース取りと武豊の騎乗がキタサンの力を完全に引き出した。
ここまで馬場が悪くなると、底力勝負になる。
清水調教師は「ゆっくりと夏休みをとらせ、秋は本当のブラックをお見せできるよう仕上げました。状態には自信がありました」と振り返った。宝塚記念の敗因をどう整理して仕上げてきたのかと訊かれると「痛めたところもないし、毛艶も体の張りも悪くなかった。獣医も『どうしたのかな』と言ったほどで、自分のなかでも確定できなかったのですが、これ以上走ったらどこか傷めると馬が思ったのかもしれない。とにかく、馬を責めず、仕上げてきました」と答えた。
関係者の口から「道悪は得意」という言葉はまったく出なかった。武が言ったように、絶対的な能力が高いから「こなした」だけだ。
前週の菊花賞同様、ここまで馬場が悪くなると、道悪の得手不得手を超越した底力勝負になる。また、武のコース取りを見て気づかされたのは、この日の馬場コンディションを冷静に分析すると、外がいいとはいっても、内より少しはマシという程度だった、ということ。つまり、内も外もたいして変わらないのだから、コースロスのないところを通ったほうが得、ということだ。ただし、それができたのは、繰り返しになるが、騎乗馬の力を信じていたからだろう。
次走は、連覇のかかるジャパンカップ。そして、有馬記念で見納めとなる。
「最強の走り」を、しっかりと目に焼きつけたい。